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普段は兄のジョルノと買い物に出かけるのだが、どうしても帰りを待っていられないくらい読みたい本があった。好奇心に勝てなかった私は危ないから一人で外を出るなという兄との約束を破り、街へ飛び出した。兄はイタリアに染まってしまったが私はこちらの国の人達から見れば兄と違い、アジアの血が強く出てしまった容姿をしていた為に観光客に間違われることが多々あった。しかもヨーロッパまで旅行をするアジア系は金持ちだと印象がついていたのだ。だからカモれると思ったのか三人の男性陣にいい景色があるからついてこないかと言われ、逃げるにも道を塞がれ困り果てていた。私がイタリア語でここに住んでいると話せば、向こうはイタリア語を話せることに驚き諦めたように見えた。しかし相手はそんな事お構いなしに腕を掴み、観光の手伝いをすると強引に誘われる。腕を振り払おうとしたが、生憎男性の力には敵わなかった。約束を破った1日目からこんな厄介ことに巻き込まれてしまうなんて。

「おい、何してんだ名前」

不意に呼ばれた自分の名前に俯いてた顔を上げ、正面を見た。そう、そこには兄と同じチームのアバッキオがいた。何度か兄と街を歩いていた時に、兄が所属するチームのメンバーと会ったことがある。他のメンバーとはある程度会話するが、アバッキオとは全く話したことはないし、顔見知りくらいの仲だった。彼の雰囲気、見た目からして話しかけてくるなというオーラを発しているような気がして怖かったのだ。だからこそ、彼が私の名前を呼んだ事に驚いた。名前を呼ばれたのも、また話しかけられるのも初めてだった。そんなアバッキオは返事もしない私を見かねてか、ため息をつく。

「ジョルノと一緒じゃねえのか?」
「どうしても読みたい本があったんだけど...」

その瞬間、いきなり私の腕を掴む男が倒れた。アバッキオが殴りかかったのだ。倒れた男に引っ張られてバランスを崩すが、なんとか踏みとどまる。一方、倒れた男を見て仲間の二人がアバッキオに殴りかかろうとしていたが、うまく交わし簡単に倒してしまった。そういえば昔、兄がアバッキオは警察だったと言っていた。だからなのか知らないけど、凄い、男らしい。最高にかっこいい!!
呆気に取られていた私に逃げるぞと言い、二人でこの場を去ったのだった。現場から少し離れてからアバッキオが一人で出歩くのは危ないから兄のところまで連れて行くと言ってくれた。しかし一人で家を出ないという約束を破りましたと話せば面倒になるのは分かっていた為、兄にはこの事を秘密にしてほしいとお願いして家まで送って貰ったのだった。この時のアバッキオといえば、とても面倒くさそうな顔をしていた。そして家までの帰り道、無言で歩くわけにもいかず、アバッキオに話しかけるも彼は意外にも普通に話してくれた。私が怖そうだと苦手意識を勝手に持っていたのだろうか?それにさっき助けてくれた時のアバッキオがかっこよすぎて、私の心臓は爆発しそうなくらい脈が早くなっていく。今日は彼のギャップに驚くばかりであった。

「ジョルノがいなくて困った時は相談しろ。買い物くらいなら付き合ってやる」

私と兄しか住んでいない家庭環境を知っていたのだろうか。私の気持ちを優先してくれたことがとても嬉しかったのだ。頭に手を置かれ、撫でられる。やばい、これは恋だと気づいてしまった。そうとなったらもう自分を止められない。恋は盲目だ。その日何をしても頭の中からアバッキオの存在が消えず、また会いたいと望んでしまうばかりだった。

次の日、兄と食材の買い出しに出歩くだけでも張り切ってオシャレをしてしまったのだが、そんな私の変化に兄は気づいていた。兄は私と違ってかなり賢いし鋭いので何故そんな張り切るのかと言われたが、そう言う気分だと言ってごまかした。結局アバッキオには会えなかったが、家に帰るも窓の外を見ればひょっとして歩いているんじゃないかと思い、ずっと見つめていた。まあこれからスムーズに会える仲になってけばいいやと諦めこの日は寝たのだった。

「え、なにこれ。意味わからないんですけど」


そうして次の日、起きてすぐ今までない状況に驚く。いつも開いている窓がシャッターまでしっかりと閉められていた。外が見えない為、朝だというのに部屋が異常に暗い。自分の部屋を出れば何処も彼処も窓が、シャッターさえも閉まっているために電気が必要だった。うろ覚えで暗闇の中電気を探しつけると、兄が散らかった部屋の中でただソファーに座っている。部屋は常に片付けてあったのに、どうしたらこうなるのというくらい家具が壊れかけていた。兄が座っているソファだって斜めになっている。暗い中一人でなにしてたんだろうか。そして視線は私の方に向いていないのに口を開く。

「なんだって許してきたつもりだった」
「お兄ちゃん?」
「甘やかし過ぎてしまったのか?」

一体なんの話をしているのかわからなかったが、思い当たる節というかここ最近変わったことといえば、私が家を勝手に出たことがバレてしまったのだろうか。いやなんでバレたんだ?もし兄が道端で私のことを見ていたなら声をかけるだろうし、それか別の仲間が見ていたのか?いやそれもアバッキオに声をかけるだろう。それともアバッキオが私との約束を破ってチクってしまったのだろうか。そりゃ私よりチームメイトの方が信頼があるわけだしなあ。いやこれが一番あり得そうだとまで考えていたのだが、私の予想とは外れる言葉を発したのだった。

「誰を好きになったと言うんだ!!どこの男が名前にちょっかいをかけたっていうんだ!!」
「は?」
「おかしいと思ったんだ。やけにお洒落をして外に出かけるし、窓の外を見て上の空。ぼくが話しかけても全然話を聞いちゃいない」
「...」
「そもそも何故なんだ。家から出る時は大抵ぼくがついていた。全くわからない。今までが平和だったからすっかり油断していた自分が凄く腹立たしい。クソッ!!!いつだって大事にしてきたのに!!親元を離れ、幼かった名前を引き連れて生涯かけて大事にすると決めたあの日からずっと!!!」
「それはどうもありがとう、、」

ぶつぶつと独り言をかます兄はこうなったら止められない。小さい頃は人の顔色を伺い大人しく生きてきたと自分で言っていたが、私から見た兄は昔から頑固だった。これをやると決めたら一直線。最近は言葉にしてはっきりというようになったので、尚更面倒臭さが増した。ちなみに私の性格は兄と反対で基本どうにかなる、なんとかなる精神の持ち主だったために、兄とは特にぶつかるような性格ではなかった。喧嘩もそれほどしたことがない。だから今回もまあ自分の世界に入ってしまった兄は無視でいいやと思って、自室に戻ってもう一眠りする。どうせ暫くすれば機嫌はなおるだろうと思っていたのであった。普段から兄を多少雑に扱い過ぎていたせいか、全く会話を重要視せず、夢にアバッキオが出てくることを望みながら寝た。