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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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2020/09/19

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いつも通り大学に行こうとすれば、家の前で承太郎が待っていると母に急かされた。二週間いないだけで忘れていたが、講義が朝一から被っていればこうしてよく迎えに来てくれていたものである。髪に寝癖さえついていなければ、メイクなんて学校についてからでもできると考えてスッピンで外に出ようとした。しかし何故だかあと一歩、玄関へと出ればいいのに外にいるのが承太郎だと思うと化粧をしていない自分が恥ずかしくなった。少しでもよく見られたいだなんて考えてしまったのだ。しかしこれ以上時間をかけるわけにもいかないので、簡単な化粧だけして外に出ようとした。今から出れば講義にはまだ間に合う。承太郎に遅くなってごめんと謝るといつものことだと返されるのだった。
しかし、会うのは告白を受けたあの時以来であって妙な緊張感があった。一体どんな会話をしようかと迷っていたのだが、何も話さないのも変な話だと考え昨日食べた晩ご飯の話だとか、花京院が勉強教えてくれたとか適当なことを言うのだった。それどころか承太郎はあの日の話題に触れてくることもない。良かった反面寂しさすら感じた。おかしい。承太郎から好きだと言われてこちらまでテンポを崩されてしまっている。私こそもっと堂々としていればいいのに、承太郎は何も気にしていないむしろなかったように接してくる。まあ元々口数が多いわけではなかったけれども。

大学について一緒に講義を受けるが、席が隣というだけで妙に緊張した。どうした、自分よ。いつも承太郎にちょっかいをかけ、怒らせていたというのに昔の自分が怖いもの無しの無敵野郎だったとすら思えてくる。講義中にバレないように視線だけ承太郎の方へ向ける。あぁやっぱりハーフっていうだけあって綺麗な顔しているんだよなあ..。昔クラスの女子軍団が、承太郎は身長も高く、クールだと言ってきゃーきゃー騒いでいたっけ。私は全然気にもならなかったけど、とってもよくモテてていたわけだ。あれこれ考えていると、承太郎と目があった。顔がじんわりと熱くなっていく。やはり変だ、私らしくない。今まで通り普通に接するべきだというのに。今はこれから始まるテストについて考えないと。時間が経てばこの関係もなれてくるはずだと信じていた。

なのにどうしてか承太郎が隣にいると全く集中ができない。明らかに意識してしまっている。日が経てば経つほど、収まるどころか承太郎のことばかり考えるようになった。承太郎から何かしてきたわけではない。ただ承太郎をまじまじと見ていると、こんな一面があったのかと今まで意識しなかったところを知るようになる。私が図書館に寄りたいと言っても待っていてくれたし、クレープこそ自分は食べないのに昔っからついてきてくれた。コンビニに寄ると言ってくれた日も、どうしてか私がお弁当を持っていないことを知っていた。知らないところでよく見ていてくれたのだと、いいところばかり見つけてしまう。

「私のどこが良かったの」

初めて想いを告げられた時は、冗談かと思っていた。高校からの付き合いだとはいえ、そんな雰囲気は今までなかったわけだ。だから気になって聞いてしまったが、刹那自分の発言を後悔する。余計なことを聞いた、自分の中で留めておけばよかったものの。

「それを聞いてどうなる」
「いや、今の発言忘れて!」
「自分で聞いておいてか」
「そう!私って変なの!」
「そうだな、人の気持ちをからかってると返したやつだからな」
「...覚えてたの...」
「俺はコケにされるとけっこうネにもつタイプでな」