めもがき | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

2023/09/11

: more

気持ちが明かせない女の子と気になって仕方がないムキになるディオ

ディオの周りに女の子が引っ付いていることなんていつもの光景だ。勿論男女問わず必ず人がいる。なのに心の中に留まってしまったのは、その隣にいた女性がこちらをみてクスっと小さく笑ったからだった。あれは明らかに私を見下しているような笑い方。貧相な体だとかブスだとかなんか思ってんのかな、と勝手に苛立ちを覚えてムッとしているとディオがこちらに見つめていたことに気付いた。まわりの会話に返事をしつつもこちらに寄越していた視線に、私は苛立ちからそっぽを向いてやる。別にディオが私の機嫌など気になりもしないはずーーーと思っていたのだが。

講義が始まる前にしれっと右隣に座ってきたディオ。生理前なのか、無性に苛立ちが消えない私は左隣の席に座り直す。すると間に一つ席が空いたはずなのに、その間はすぐになくなった。おい、と小さく低い声が聞こえたが私はディオを見ようとはしなかった。教科書を読んでいるふり、聞こえないふりを貫こうとするとディオがその教科書を閉じてしまい、咄嗟に声を出そうとすると声が被さった。

「いい度胸だな、このディオを無視するなんて」
「たまには無視されなよ。普段無視なんて縁がないだろうけど」
「随分棘のある言い方だな」
「別に」

会話もしたくないのでここまでで再び教科書を開こうとするが、本の上に手を置かれたまま退けてくれるような気配もない。邪魔なんだけどーと声をかけても対応してくれなかったので、これは会話をしろということだ。

「なぜ機嫌が悪い?」
「私の機嫌がどうだろうが関係ないでしょ」
「さっき視線逸らしだろ」
「気のせいじゃない?」
「頑なに言いたくないということは、何かこのディオと関係があるのか?」

まさか、そんな。と一瞬心が動揺したが、きっと偶然だ。私は何もしていないし何も誰にも自分がイラついていた理由を話してなどいない。彼が当てずっぽに言った、ただそれだけだ。勘違いも甚だしいと笑ってやると、気になると続けていうディオにバレてないとホッとした。ほら偶然だ。
考えてみればディオの取り巻きに鼻で笑われただけで、感情を乱してしまうだなんてふざけた話だ。そんなことあってはならない。側から見ればそれは気があるような話だからだ。

「気になる。言え」
「なんもないって」
「言え」
「言わない!」
「言え」
「ちょ、ちか、いって!」

意地を張ればはるほど、前のめりになって近づいてくるディオ。彼の息が自分の肌にかかりそうな距離に、彼が掴んでいない左腕で引き離す為に少し押してやるつもりだった。ディオ、と高い声がする方を見れば今朝見下してきたあの女が彼の背後にいて、この誤解されそうな状態が嫌で突き放そうとする手に力が入った。普段のディオもこんなこんなの力で倒れるようなやつではないのに、振り返ろとしたタイミングで肩を思いっきり押されてしまえば重心が傾いた。
彼だけが倒れるはずだったのに、彼に引っ張られていた自分の右手までもっていかれて、バタンっと倒れた頃には女性の悲鳴が響き渡った。派手な音と悲鳴に大丈夫か?!とあちらこちらから心配の声が聞こえる。痛い、?痛くない。と自問自答していると頭上から聞こえるディオが「貴様..」と怒りを含んだような声がした。その言葉にハッとした私は彼の体の上に乗っていることに気づき体を起こそうとすると、なんだなんだと足音が集まってきたような気がして体が硬直してしまう。薄目で周りを見渡すとやはり人だかりができていて、「大胆だな」と聞こえた言葉に恥ずかしくなって起きられなくなってしまった。このまま気絶したふりをしてしまおうと心に決めたその時、小さく啜り泣く誰かの声がして片目でその方を探すとなんと先ほどの女が泣いていることに気づいてしまった。は、っと小さく漏れた吐息。私は心の奥底が温かくなる感覚があった。じわじわと広がっていき、思わず顔に出てしまうほど感情が高まっていく。勝ったーーその言葉が浮かぶが、いや一体何に対してーー?

「おい、起きろ」

肩を押され、バランスを崩して一人地面に倒れ込む。衝撃に声を出してしまうと、こちらを睨みつけるような顔でみているディオがそこにいた。恥をかいたという意味で嫌悪されているに違いないが、彼が不機嫌になっているのを見てそれはそれはまた気持ちのいいことだった。
ふと、先ほどのことと言い自分の性格が歪んでいることに気づく。私こんな幼稚なことで苛立ったり喜んだりするような性格ではなかったのに。

立ち上がって再び席に座ると、ディオも後を追うように同じ席についた。肘をついて、相変わらず気に食わない顔をしていたが気にしない。(いやそもそもしれっと隣座んなよ)
それにしてもあの女が啜り泣きしているのが聞こえる。ばーか、私に喧嘩を売るのなんて100万年早いっつーのなんて嘲笑っていると自分の頭が撫でられた。拍子抜けしている私はなんとも大きな口を開けて間抜けな顔だった。横から伸びていた手が原因だとわかっていてパクパクと口を動かしたが声にならない。

「さっきまで機嫌が悪そうだったのにどこか楽しそうだな」
「........なぁ、な」
「機嫌がコロコロ変わって可愛いなと思った」

悲鳴にも近い声が周りから聞こえた。何を企んでいるの?と普段なら聞いていたところだが、生憎今は声が出なかった。このバクバクとうるさい心臓だけは気づかれたくはないのに、上機嫌なディオにひょっとしてバレているのではと焦ったがチャイムが鳴ったと同時に平然を装って何事もないふりをした。

20230715