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2021/12/18

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Overthinking

好きな人の過去は気になるものだ。私と付き合う以前、仗助が長く付き合っていた彼女がいたとは聞いていたが、いざ自分が彼の相手となるとその過去を無性に探りたくなってしまう。そして見つけてしまったSNSに残る楽しそうなツーショット。最初はいろんな意味でお似合いだなんて小馬鹿にしていたものの、案の定気持ちは沈んでいった。心の奥底にたまる真っ黒な感情。女は可愛くないのに、なんだか物凄く腹立たしい。あぁ、なんて最悪なものを見つけてしまったのだ!きっと仗助と付き合っている限り、この画像を一生思い出すであろう。自分の止まらない欲求が嫉妬を生み出した。ただの自業自得である。

考えても仕方のないことなんていくらでもある。それが過去のことなら尚更だ。しかし毎日見ては同じことを考えてしまう自分は、もうどうしようもないアホだった。
この件を仗助に伝えたところで、勝手に嫉妬している身勝手な女にしか思われないだろう。自分の中で留めておきたいところだが、過去をほじくりすぎてしまったせいか私とは違ったあの子の良さが彼の中では生き続けていると思うと、私は気持ちの整理ができなくなってしまう。なんとも情けない話だが、理由を言わずとも彼を困らせたくとなるのだ。それはきっと自分をあの子よりも特別で大事であることを確認したいが故である。だってとても幸せそうな二人だった。自分の方が勝っている自信はあるが、別れていても二人の中で、その記憶が互いに残り続けていくと考えただけでも腹立たしい。元カノ不幸になれと、心の底から願う自分はなんとも惨めな女だ。

いつも仗助が遠回りをしてまで、一緒に下校していた。必ず抱きしめてキスをしてくれてから帰ってくれる。毎日連絡もマメにしてくれ、確かに愛されていることは実感するのだ。だからこそあの子のことも、同じように大事にされていたのだろうとなんとなく想像がつく。私たちがいいカップルなのと一緒で、仗助がその前の彼女と幸せそうなカップルであったのだ。バカな私は見てしまった過去のモヤモヤに捉われたまま。じっと耐えることもなく、二人きりになれる下校中でさりげなく聞くことにした。嫉妬していることをバレたくもないし、そんな彼女ダサすぎる。

「仗助が付き合ってた前の彼女ってどんな子だったの?」
「ん?どうだったかな..えーっと...女の子ってかんじの子っつーか」
「なにそれ」
「ふんわりしてるってことだよ。お菓子作りが得意な子だった」
「私と全然真逆じゃん」
「だろうな」

きもいと口には出さないが心でそう思った。何が女の子って感じ?SNSに残ってた写真は全然可愛くなかった。確かにカジュアルを好む私が着ないような女の子らしい服装をしていた。
今付き合ってる相手が1番だよ、過去の女なんて忘れちまった!なんて言ってくれればいいものの、そんな気が利いた男がこの歳でいれば逸材である。自分で聞いておいてなんだが、胸糞が悪くなるような会話だった。しかしこれ以上聞くと私が嫉妬していることが相手にバレてしまうので探れない。ここで終わりにしよう。家ももうすぐだ。

「あ、これ手袋とマフラー。今日貸してくれてありがと」
「おうよ」
「仗助は手袋やマフラーして帰らないの?」
「誰かさんが寒いから持ってきたんだよ」
「気が利くじゃん、流石仗助」

肘で仗助の腕をつついてやると、呆れながらも私のためだと言ってくれた。本当に何でも私のために尽くしてくれるいい男である。私には勿体無いほどに。

「明日、朝また迎えにくるからな」
「いつもありがとう」
「何がいつもありがとうだ。俺がいねえと遅刻ばっかりしてたくせによォ」
「朝はどうも苦手で」
「世話の焼ける女だな」

この時の私は、元カレに囚われて不安定だった。そんな機嫌が悪い中で、仗助の発言は癪に触った。前の女はそんなに世話の焼けない女だってことか。あーあ、仗助の中ではさぞかし素晴らしい女性出会ったんだろうね!

「どうせ私はがさつ適当女ですよーっだ」

軽く舌を出して拗ねてやると、仗助は私と反対にクスクスと笑い出した。

「それが可愛いんだよ」
「どういう意味」
「俺がいないと何かができないから可愛いってことだ。何でもしてやりたくなる」
「なめてる?」
「なめてるとかじゃなくて、男心を掴むのが上手いんだよって話」
「はい?」

じゃあなと言って抱きしめて軽いキスをしてくれた。いつもの流れだが、仗助の言葉の意味を考えていてそれどころではなかったが。
手を振って去っていく。風が吹いて震える私は、仗助が左手に持つマフラーと手袋をせずに帰っていく姿を見た。男の人は体温が違うというけれど、そんな面倒なことよくしてくれるマメなやつだと感心する。私は彼に十分愛されている。だいぶ気に食わないが、何もできない私が可愛いらしい。なにそれ、全然嬉しくないんだけど。変な仗助、アホな仗助。でもそんな仗助を好きで嫉妬に狂う自分が、一番変でアホな自覚はあった。

20211120