魔王になっちまった。 | ナノ
血みどろの愛を君に

知らない人に連れて行かれた先は、どこかの豪華な部屋。
装飾品から何からすべてが豪華だった。


(貴族のお屋敷だろうか…)


そう思えるような作り。
私の家のようにほこりだらけじゃないし、錆びれてもいない。


(…貴族になにかしただろうか…、なんか変な事でもしただろうか…というか、死なずに帰れるかな)


段々とマイナス思考に陥る。


ガチャ…


すると、豪華な部屋に合う豪華な扉が開いた。


「…ああ、ちゃんといらっしゃいましたね。良かったです」


「あ、あのここはどこですか…?」


「そのことについては、後でお話いたします。さあ、まずは式に出ていただかなくては」


「式…?な、なんの、ですか?」


「──とりあえず、行きますよ」


無理矢理話を遮られ、手を掴まれる。


「失礼いたしますね」


高級感あふれる燕尾服の胸ポケットから魔族の証の杖を取り出し、私を家から連れ去った時と同じ呪文を唱えた。


「名前、様」


熱の篭った声で名前を呼ばれた気がした。
そして、目を閉じて一瞬。
特有の浮遊感を感じたあと、目を開けるとそこにはたくさんの民衆がいた。
次に聞こえてきたのは、その民衆の大きな歓声。
ぱっと見ただけで何万人もいる。


「えっ…?」


「さあ、名前様。真ん中へ」


放心状態の私を連れていく水色の髪の人。
その真ん中の近くには、私の家に来た緑の髪と紫、青の髪の人がいた。


「これより、第百代魔王就任式を始める」


「……え?」


緑の髪の人が言った言葉に目を見開く。
なに、第百代魔王就任式…?


「第百代魔王は、白宮名前様が就任される!!みな、祝福の拍手を…!!」


拍手が湧き上がる。
歓声があがる。


「名前様。第百代魔王、白宮名前様。心から祝福を申し上げます」


私の目の前で私を連れ去った4人が膝まづいた。


「四大貴族、火を司る黒子家。黒子テツヤ」


空色の髪の人が言った。


「四大貴族、地を司る緑間家当主。緑間真太郎」


「四大貴族、水を司る青峰家当主。青峰大輝」


「四大貴族、風を司る紫原家当主。紫原敦」


緑、青、紫の髪が空色の髪の人と同じことを言った。


「「「「我々、魔族の始祖から存在する四大貴族、第百代魔王名前様に忠誠を誓います」」」」


彼らは、小さな剣を取り出し自らの腕に切り付けた。
そこから滴る血をそれぞれ口に含んだ。
私は、それをぼうっと見ていることしかできない。
今、気づいたが民衆がさっきの騒ぎが嘘のように静かだ。
まるで、彼らの言葉を彼らの行動を聞き逃さぬよう見逃さぬようしているようだった。


「名前様」


名前を呼ばれた、その瞬間だった。
空色の髪の人の唇が私の唇にあたる。
そして、舌で無理やり口を開けられ、その瞬間、何か液体が流れ込んできた。


「んっ…!!!!」


目を見開く。
喉をその液体が通って行くのを感じた。
その液体が、何かは唇が離れ、彼の口元に付着している赤で分かった。


「名前様、」


緑の人も唇を合わせ、赤の液体を私に流し込む。
やっと離れたと思ったら、青の髪の人も紫色の髪の人も同じことをした。


「ふふ、これでやっと名前様を捕まえました」


そう、顔を赤らめ口元を拭っていない空色の髪――いや、黒子テツヤは言った。
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