「名前っちー!名前っちー!」
ある春の木漏れ日がさす中、私の家のドアの前で私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
毎日同じ時間に聞く声だ。
「開いてるから入っていいよー!」
ガチャリとドアが開く音がした。
「名前っちー!おはよっスー!!」
ぎゅうっと抱きしめてきたのは、私の幼馴染の涼太。
いつみても顔が整っており、相変わらず女の子にモテている。
「ねーねー名前っち、今日は何するんスか?」
「…もう、毎日毎日私に付き合わなくていいよ?ほかの友達と遊んできなよ」
人付き合いのいい涼太と違い、私はあまり人付き合いはよくない。
だから、いつも幼馴染ってだけで私に付きまとう涼太に苦笑いしか出ない。
「俺は、名前っちと一緒がいいんス!ほかの友達なんて学校でいつも会うんスから」
私とも学校で会えるよね?なんて思ったけど心の中にしまっておこう。
「ねえ、名前っち」
「ん?」
急に涼太の顔が真剣みを帯びた。
「最近、俺以外の男とよくしゃべってるっスね?」
耳元で声がした。
いつの間に私の後ろに来ていたの!?
「え、そ、それは。先生の頼まれごとを伝えたりしただけで…」
「ふーん。まあ、今回は許してあげるっスけど、次はないよ?」
ぞくり、と鳥肌が立った。
私に人付き合いがないのは、涼太のせいでもある。
涼太はひどく私が他人と関わるのを嫌う。
特に男には。
前に、クラスの男子と少し話しただけで、監禁まがいな事されたし。
「うん、分かってるよ」
私の言葉に安心したのか、ぎゅっと抱きしめてきた。
その時、玄関のほうで馬のかぎづめの音がした。
「え、なに…?」
この家に近づいてきてる気がする。
コンコン、と扉が叩かれた。
「…名前っち待ってて。俺が行ってくるっス」
涼太はそう言って、玄関のほうへと歩いて行った。
ここからは、よく見えないがなんか揉めてるような声が聞こえる。
「涼太ー?大丈夫ー?」
「ちょっ!!名前っち…!!来るな!」
「へ?」
涼太の焦った声が聞こえた。
そして、玄関に行くとそこには高級そうな服をしっかりと着込んだ人が数人いた。
水色の髪に緑色、紫に青。
それに涼太が黄色だからカラフルすぎる。
「―――あなたが、白宮名前様、ですね」
水色の髪の人が言った。
その顔は無表情だが、心なしか嬉しそうな声音だった。
「あなた様を、迎えに参りました」
私たちの目の前で4人の客人は、膝をついたのだった。
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