「――――名前っち!!!」
聞きなじみのある声がした。
「っ、涼太?涼太っ!!」
扉の所にいる長身の金髪に、私は勝手に足が動き出した。
「っ、名前様!!」
テツヤさんの手がギリギリ私には届かない。
目の前にいる幼馴染みの元へ足は自然と走っていた。
ぎゅう
「っ涼太!!」
「名前っち!!!会いたかった!!!」
抱きしめられた涼太の腕。
涼太の匂い。
全てに懐かしさがあふれ涙が出そうだ。
離れて3日も経っていないのに。
「私も、会いたかったよ!」
その時、私の背後から殺気を感じた。
それと同時に涼太の私を抱きしめる力が強くなる。
「――――見たことのある顔ですね」
テツヤさんが怖い顔をして涼太を睨んでいた。
その手には杖がある。
それに涼太は、懐から杖を出す。
「…ああ、思い出しました。確か名前様を迎えに行った先にいた少年ですね」
「…そうっスね。あんたたちが勝手に俺の名前っちを連れていきやがって…そして、勝手に魔王にしたんスよね」
「…勝手、ではないのだよ」
さっきまで私たちを見ずに食事をしていた緑間さんが、ナプキンで口を拭きながら会話に入った。
「緑間くんの言う通りです。君も魔族の端くれなら学んだでしょう?魔法歴史学で」
テツヤさんは淡々と言った。
「…そんなことはどうでもいいんスよ。俺は名前っちが俺の元からいなくなったことに怒っているんスからね」
その言葉を発した瞬間、テツヤさんが呪文を唱えた。
私は慌てて杖を取り出し、呪文を唱える。
「(っ、お願い、間に合え!!)」
テツヤさんの炎が私たちをめがけて押し寄せてくる。
もう少しで到達する、と思った瞬間だった。
パリーン…
結界が、炎を弾く音が聞こえた。
「…はあ、良かった…」
テツヤさんの攻撃を防げたことに安心した。
「おーおーおー、さすが魔王になったくらいだな。テツの攻撃を防げるなんて」
「だねー」
今まで黙っていた青峰さんと紫原さんが私の術を見て言った。
心なしか、青峰さんは嬉しそうにしているようにも見える。
「――そうじゃなきゃ、俺は魔王として認めないのだよ」
緑間さんが、食器を手から離し、ナプキンで口周りを拭く。
そして、私たちを見た。
「……緑間くん、何を言っているのですか。名前様が魔王として認められることは当たり前です。そうでなければならないのですよ」
まるで、私の魔力は高いと知っているかのような口ぶりだった。
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