いつか、君にすべてを捧げようと思うんだ。
――――――
「―――――名前、様」
声をした方を見ると、そこにはテツヤさんの姿があった。
その表情は、無表情の顔を崩して目を見開いていた。
「っ、あ、テツヤさん…」
「やあ、久しぶりだね。テツヤ」
赤司さんはまるでテツヤさんを知っているかのように彼に話しかけた。
「なん、で…なんで貴方がここに…っ、神聖なる魔王の部屋にいるのですかっ!!」
「僕がここにいてはいけない理由があるのかな?」
「あるでしょう!?しかも、貴方は牢屋に入れられているはずでは!?火神くんはっ!?」
「牢屋なんて僕にとっては何者でもないよ。火神…ああ、そういえば君の黒子家の分家だったな」
「質問に答えてください」
私はさっきから聞いてるだけだが、二人は今にも杖を出して戦いそうな勢いだ。
「――今頃彼は、僕を探してこの城中を探し回っているよ」
「……そうですか」
すると、テツヤさんは私のもとに来た。
「名前様、起きていらしたのですね。ずっとお傍におらず申し訳ありませんでした」
「あ、いえ…」
「顔色もよろしいようですね。よかったです。歴代の魔王は、僕ら四大貴族の血が合わない人が多いらしく、拒絶反応を起こす方ばかりでしたので」
「拒絶、反応…」
「ええ。僕ら四大貴族は血が濃いらしくて…魔王になられるお方は一般庶民の方が多いので拒絶反応が起こるのですよ。一般庶民の方にはオールマイティに術を使えますが、僕らはそれぞれの家の四大魔術の一つしか使えませんからね」
「私たちは四大魔術以外の属性を使うことはできますからね…」
「そうです。なので名前様が拒絶反応を起こさなくてよかったです…」
テツヤさんは、白い手袋をはめた手で私の手を取った。
「僕らの血を…僕の血を素直に受け止めてくれた証拠ですね」
テツヤさんの声はあまりにも小さすぎて聞こえなかった。
「―――名前が君たちの血を飲んだ…!?」
「赤司さん?」
急に声を荒げた赤司さんにびっくりした。
テツヤさんもびっくりしている。
「っ、ああ、そうか。儀式か。魔王になるためには必要な事だったね」
こつり、と靴の音が響いた。
それは、赤司さんが一歩、私に近づいた証拠だった。
「っ、」
するり、と喉から胸元まで撫でられる。
その指先は、左胸の魔王の証に触れた。
「――毒々しい赤だね。君が彼らの血を拒絶しないことはわかっていたよ」
「え?」
「…嫉妬、してしまうよ。名前」
その瞬間、赤司さんは私にどこから出したかわからない杖を向けた。
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