ガチャリと乱暴に扉が開く音が聞こえた。
そちらを向くと案の定、この国の軍隊長である青峰くんがいた。
「この部屋は魔王の部屋ですよ。ノックくらいしたらどうですか」
「どうせ、気を失ってんだろ?叫び声が聞こえたしな」
「はあ、あなたは青峰家の当主でしょう?もう少し、自覚と礼儀を持ったらどうです?」
「いーんだよ、テツ。みんな俺に文句なんて言わねーから」
当たり前だ。
今までの青峰家で青峰くんが歴代の当主よりも強い魔力を持っているのだから。
「それで、刻まれたのか?魔王の証」
「はい。綺麗に刻まれました。彼女によく似合う牡丹です」
青峰くんは、名前様に寄って来て胸元を見た。
「……今までは男しか魔王はいなかったからな。男どもの肌に刻まれたボタンを見てもなんも面白くなかったが…やっぱり、女の肌に刻まれてると興奮するよな」
「青峰くん、仮にも名前様の前ですよ。失礼なこと言わないでください」
「わりーわりー。けどよ、テツも思うだろ?」
「……ええ、まあ。ずっと待っていましたから」
ふわりと、優しく名前様の頬を撫でると彼女はくすぐったそうに体をよじった。
「ふふ、かわいいですね」
「…テツでもそんな顔するんだな」
「青峰くん、いったい僕を何だと思っているんですか。火で炙りますよ」
スッと杖を出すと、青峰くんはすぐさま謝ってきた。
「……そういえば、『彼』のこと火神くんに任せっきりでいいんですか?」
僕がそう言うと、青峰くんは視線を逸らし、頭をかいた。
「いいんじゃね?あいつだって曲がりなりにも軍のbQだ。お前の家のやつだしな」
「……遠い親戚ですがね」
「ふん、それでも強えーからいいんだよ」
「そうですか。火神くんが役に立っているようなら、黒子家としてもうれしいことです」
「ははは、お前がよく言えるな。次男だろ?」
「…その話はやめてくださいと言ったはずですよ?」
青峰くんの後ろに回り、背中に杖をあてる。
びくり、と彼の体が動いた。
「僕は、出来の悪い兄を殺せるような残酷さは持ち合わせていないので」
「はっ、嘘つけ」
「ほんとですよ。まあ、彼が当主をやっていてくれたほうが扱いやすいですし、僕も動きやすいので」
「…残酷さ、完璧あるだろ」
「何か言いましたか?」
「いいえ、何も!」
「ですが、たとえ誰だとしても僕の逆鱗に触れるようなら即座に殺します。跡形もなく綺麗に。ああ、でも燃えカスは残りますかね」
「……テツを怒らせないようにするぜ」
「そうしてください」
さて、そろそろ公務の時間ですね。
仕方ありません、行きますか。
早く行かないと緑間くんに怒られてしまいます。
「―――おやすみなさい、僕の魔王様。いい夢を」
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