キセキとキセキの少女
ポケモンセンターに人だかりができている。
気になったので、隣にマイナンとプラスルを連れている女性に聞いてみることにした。
「すみません、この人だかりはなんですか?」
「名前様が怪我をしてスイクンに乗せられてきたっていうから、大丈夫かと思って来てるのよ。あら?ここでは見かけない顔だけど…もしかして旅人かしら?」
女性は、丁寧に教えてくれた。
「そうっス!俺達、ポケモントレーナーになるために旅をしてるんスよ!」
「そうなの。だったら、一目名前様を見ていくべきよ」
「あの、その名前様ってどんな人なんですか」
「あら、知らないの?」
「はい」
「ここは、伝説ポケモンや幻ポケモンが訪れる『キセキシティ』。ここには、代々続く巫女一家があるの。その巫女一家の主が名前様よ。名前様は、特別に力が強いから、ポケモン達としゃべれるし、好かれるの。まあ、それだけじゃないんだけどね…」
「すごい人なんスね」
「ええ。このキセキシティの誇りよ。だからみんな崇めているの」
ふわりと笑う女性。
誇らしげだった。
「……他にも理由があるって言ってましたが」
顎に手を当てている赤司が聞いた。
「え、ああ。その名前様は、異例で。こんなにも伝説ポケモンや幻ポケモンに好かれるのは、巫女一家で名前様だけなんです」
「だから、あのスイクンも彼女を背に乗せていたのか」
「名前様は、どこにいても周りには伝説ポケモンや幻ポケモンが守ってくれます。ですが最近…」
その女性が言葉を続けようとした時だった。
急に人だかりが騒ぎだした。
「名前様!大丈夫ですか!」
「名前様!」
ポケモンセンターから、あの少女が出てきたらしい。
「あ、みなさん…心配してくださってありがとうございます。もう、大丈夫ですよ」
「いえ!名前様が無事ならいいんです」
「ありがとうございます」
少女の声は鈴のようだった。
そして、少女が人だかりから出てきた時。
「あ、さっきの人達でしゅ」
少女の腕の中にいるシェイミがこちらを見て声を出した。
その少女の周りにはラティアスとラティオスがいる。
「…っ、あなたたち、誰?」
少女の瞳には、警戒の気持ちがこもっていた。