半壊ランデブー | ナノ
始まりの歌

それが『キセキ』だと思った。


ある地方の街、キセキシティ。
この街は、たくさんの奇跡が起こると言われているとして、神聖な街として機能している。
ある6人組の旅人たちが休憩がてらこの街に寄ろうとしていた。


「この街は、伝説ポケモンや幻のポケモンがよく見られるそうですよ」


ガイドを見ながら言うのが黒子テツヤ。
空色の髪に無表情が特徴だ。


「それは、すごいっス!さすがキセキシティ!」


そして、この犬のような人が黄瀬涼太。
彼の肩には、相棒のピカチュウがいる。


「ふん、興味深いのだよ」


メガネをくいっとあげながら言うのが緑間真太郎。


「ジムねーのかよ、ここ」


あくびをしながら言ったのが青峰大輝。


「ないらしいよー、峰ちん」


カビゴン並の背の高さの紫原敦。
そして、この少年たちを仕切るのがこの少年。


「ほら、静かにしろ」


オッドアイが特徴の赤司征十郎だ。


「ピカピッ」


黄瀬のピカチュウが耳を揺らして何かに気づいた。
そのときは既にもう彼らは、キセキシティの敷地に入っていた。


「ん?どうしたんスか?」


何かを感じ取ったピカチュウは、頬からバチバチと火花を散らしている。
その瞬間だった。


「っ、みなさん、目の前っ」


驚くことに、伝説のポケモンスイクンがいたのだ。


「…キセキシティ、すごいのだよ」


本当に伝説のポケモンが見れるとは思いもしなかったのだろう。


「ん?なんかスイクンの背中になにかいない?」


「…本当だ。誰か人が乗っているね」


よく見ると、傷だらけの少女が乗っていた。
すると、この街の住民がスイクンに気づき声をあげた。


「っ!名前様じゃ!スイクンに名前様が乗っておられる!!今すぐポケモンセンターにっ!」


その少女は、この街で有名らしい。
スイクンは、ちらりとこっちを見てから華麗にポケモンセンターへと向かった。


「…人に懐かない伝説のポケモンが少女を乗せてるとは…」


しかもあの少女、様付けで呼ばれていた。


「…赤司くん、気になりますか?」


「どうしてだい?テツヤ」


「すごく気にしてましたよね」


「そうだね。気になるよ。あのスイクンに懐かれているのだからね」


興味深い。
そのとき、赤司の足元を引っ張るポケモンがいた。


「っ、」


「あー!シェイミじゃねえか!珍しい!」


そう、シェイミが赤司のズボンを引っ張っていた。


「…さっき、スイクンと女の子見かけなかったでしゅか?」


「!しゃべれるんですね」


「テレパシーでしゃべってるんでしゅ!早く答えて!」


よく見るとそのシェイミは、傷だらけだった。
赤司は、そのシェイミを抱きあげる。


「スイクンと少女なら、ポケモンセンターに行ったよ」



「!ありがとうでしゅ!……って何で離してくれないんでしゅか」


「いや、ポケモンセンターまで送ってあげるから僕の質問に答えてくれない?」


シェイミは、傷だらけ。
そして疲れている。
質問を答えるだけで連れてってくれるなら…


「いいでしゅよ」


これが、少女と6人の始まりだった。

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