彼女を追いかける訳
火神の後姿を見て、私は紫原くんの背中に隠れるのをやめた。
「……名前っちは彼と知り合いなんスか?」
黄瀬くんはじろりと、彼の後姿を見ながら言った。
「知り合い、か。まあ、知り合いと言えば知り合いだけど」
「確か、『NONE』と言っていたな。その組織は確か、全国各地でポケモン研究所を持っていてポケモンの生態やらを調べている団体だったはずなのだよ」
「……知っているのでしゅね」
「有名ですしね。それで、なぜ彼らは名前さんを追いかけているのですか?」
黒子くんの問いかけに私は下を向く。
すると、心配してかラティアスとラティオスが寄ってきて喉を鳴らした。
「…、ありがと。そう、彼らはポケモンの生態の研究をしています。それは、私も賛同しています。ですが、彼らは……裏では珍しいポケモンを集めて研究や実験しています」
「え!?」
「珍しいポケモンや伝説ポケモンは警戒心がとても強い。そして、個々が強いです。なのでなかなか捕まえられない。そこで彼らは知ったんだ。『キセキの少女』と呼ばれるどんなポケモンからも好かれる人物がいることを。『キセキの少女』は、珍しいポケモンも伝説ポケモンも、いい意味で言えば友達になれるけど、悪い意味で言えば彼らを意のままに扱えるということ」
シェイミがぎゅっと私の服を掴んだ。
「なるほどね、それは名前ちんを捕まえたくなるね」
「名前が手の内にいれば、世界中のポケモンを自分のものにでき、意のままに扱えるからな」
「そう。だから、私はポケモン達のために彼らには捕まるわけにはいかないの」
ぎゅうっとシェイミを抱きしめる力を強くする。
絶対にあの人たちの好きにさせない。
「…名前、名前は僕たちのためによく頑張ってくれてるでしゅ。だから、みんな名前のことが大好きなんでしゅよ」
「うん、ありがとう。ありがとうシェイミ」
隣にいたラティオスとラティアスも寄って来て抱きしめてくれた。
すると、周りにいた野生のポケモンたちも私の周りに来始めた。
「……っ、やっぱり名前さんはすごいのですね」
黒子くんがそう言ったのが聞こえた。
「名前、お前いままでよく捕まえられずに来たな」
「うん、みんなポケモンたちが助けてくれたから」
青峰くんの問いに答えると、目を見開かれ驚かれた。
「みんな助けてくれるし、私の隣にはいつもシェイミがいるから大丈夫」
その時だった。
きーん、とひどい耳鳴りがした。
「っ!?」
「名前っち!?」
「名前さん、どうされたのです!?」
急にしゃがみこんだ私にみんな心配してくれて声をかけてくれる。
「名前、どうしたのでしゅか?」
「…っつ、やばい、耳鳴りが…」
「っ!まさか、名前!!ポケモンに何かあったのでしゅか!?」
シェイミの言葉に、6人は顔を歪めた。
「おい、何かあったのかよっ!」
青峰くんの必死な声がした。
「………森に、行かなきゃ」
「え?」
「セレビィが…っ!!」
目の前が暗くなる気がした。