「和成っ!和成っ!和成っ!」
赤髪の彼からの得体のしれない光は、和成の心臓を突き刺した。
血を流して倒れる和成は、もうすでに瞳には光がなかった。
「和成っ!死んじゃいや!!」
「もうすでに、彼は死んでいるだろう?」
「っ、和成!嫌だ、目を覚まして!」
「何をそんなに泣くのか分からないな」
「この、人殺し!!和成を、返せよお!」
和成を殺しても平然と笑う彼が分からない。
なぜ、和成は死ななきゃいけないんだ。
なぜ。
「和成、一緒にいるって約束、したじゃんか」
「泣いても死人は帰ってこないよ」
「嫌だ、帰ってくるもん!絶対に、帰ってくるもん!!」
自分自身が血に汚れるなんて気にしてられない。
それでも、横たわる和成を抱きしめていたかった。
「帰ってくる?帰ってくるはずない。そんな馬鹿な話はやめろ」
自分でも分かっていた。
「うわあああああああああああああああんんんん」
ただ、その森の中で私はずっと泣き続けていた。
――――――
「あら、起きたのね」
「お母さん……?」
目を覚ます。
そこはいつの間にか私の部屋だった。
「名前、和成くんがね。事故で亡くなったらしいの。交通事故だそうよ」
「えっ……?」
交通事故!?
お母さんの告げた言葉が受け入れられない。
「交通事故?嘘、嘘だよ!殺されたんだ!和成は、殺されたんだ!」
「名前?どうしたのよ。殺された?何を言っているの」
「だって、だってだって私この目で。目の前で見たんだよ!?」
お母さんは私の頭を撫でる。
「名前、和成くんの事はショックなのはわかっているわ。いきなりだったものね」
「違うって、お母さん!信じてよ!!」
「名前、悪い夢でも見たんわ。お父さんに言って幸せな夢でも見せてもらう?」
「お母さん!」
「ほら、もう少し寝なさい。今夜は和成くんのお通夜なんだから」
ガチャリ、と静かに部屋の扉が閉められる。
どうして、何で信じてくれないの。
目の前で和成は殺されたのに。
なんで、交通事故なの。
「和成、和成……」
和成がいない生活なんて、考えられないのに。
前 | 次