「俺は、生まれた時からアリスがあるって分かっていたからな。というか両親もアリスだったし、確実だったわけ。母さんのアリスを受け継いだわけだけど」
「学園に追われていたんですね」
「そういうこと。だけど、俺ら家族は逃げずにいたんだ」
「よく、捕まらずにいたっスね」
幼馴染みである、和成は、和成の家族はずっとかたくなに入学を拒んでた。
「まーな、母さんが結構強い人だったらしいし」
あははと笑う和成。
「なんとか、逃げられていた10歳のある日だ。その日に事故……いや、事件が起きたんだ」
唇を無意識に噛む。
その日に、起きたんだ。
「あれは、暑い暑い初夏の話さ――」
―――――――
今年の夏は、暑くなるらしいと天気予報で言っていた。
まだ梅雨もあけていない六月。
じめじめと湿気に暑さが加わり、体が溶けそうだ。
「名前ー!遊ぼうぜー!」
近くの家に住む和成が私の家に来た。
「うん、遊ぼ遊ぼ!」
人当たりのいい和成は、クラスのみんなからも慕われている。
「何して遊ぶか!」
「和成の不思議な力見せて!」
「え、えー?俺のー?お前、ほんと俺のアリス好きだな」
私はよく和成のアリスを見せてもらっていた。
無機物や有機物、いろんなものから記憶を読み取れる。
和成に探し物を言えば、必ず見つかるというすごいアリス。
「うん、私もアリス欲しかったなー」
「お前の両親は、アリスなのにな」
「ねー」
私の両親もアリス持ちである。
前にアリスが欲しかったなーと両親に言ったら悲しい顔で「持たなくてよかったよ」と言われた。
そして、和成も両親と同じことを言う。
「俺は、名前が持ってなくてよかったよ」
「……和成もそう言うよね」
悲しそうなそれでいて嬉しそうな表情だ。
「まあ、それよりも遊ぶか!」
「うん!この前に会った、珍しい鳥さんを探そうよ!」
「お、いいな!」
私達は、この前見つけた珍しい綺麗な青い鳥を探し始めた。
「いないねー」
「いないなー。確かにこっちに来たんだけどな」
その時、横からこつりと音がした。
私達は、そちらの方を向く。
「やあ、君たちのお探しのものはこれかい?」
そこには、どこかの制服を着たわたし達と同い年くらいの少年がいた。
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