想像モンスター | ナノ


確かにそれは掴んでいたものだったのに、いつの間にか消えて、私はたった独りになった。
それが、嫌だった。
君がいなければならないと思った。


――――――


「――さて、名前さん。作戦会議を開きましょう」


黒子くんが私を見て言った。


「赤司くんは、厄介な相手です」


「それは知っているのだよ。それでどうする気なのだ?」


緑間くんは、本日のラッキーアイテムである蛍ちゃんが作ったらしいカエルを持っていた。
なんと、そのカエル自分が言ったことの反対を呟くカエルなんだそうだ。
なんとうるさいカエル……


「戦闘は覚悟のうえです。とりあえず、みなさん死なないように」


「黒子っち、そこが大前提なんスか」


「もちろんですよ。なんだって赤司くんですからね」


何を言っても赤司だからという言葉で解決するあたり、征十郎くんすごい。


「……さて、そろそろお二人のことを話してもらいましょうか」


「あっ……」


みんなの瞳が私たちを貫く。


「名前。俺から話すよ」


「和成」


和成は、私の頭を撫でてみんなを見た。


「みんな驚かないで聞いてくれるか?」


「――当たり前です」


「どんな事実でも受け入れろよ」


「分かっているのだよ。初等部からの付き合いだ。もう驚きもせん」


「あはは、真ちゃんかっくいー!」


緑間くんの言葉は、みんなの気持ちを代弁していた。
和成は、一度つばを飲み込む。
私は次に和成から出る言葉を聞きたくなく、目をつぶる。


「……俺ね。一回、死んでるんだ」


ああ、和成言っちゃった。
みんな、目を見開いて固まっている。


「あれ?みんなどったのさ!」


「……高尾、いい加減にするのだよ」


「ちょ、真ちゃん怖いって!」


「お前は、体温もあるし息もしている。生きているのだよ」


確かに、和成は生きている。
だが、生きてはいないのだ。


「だーかーらー。俺は一回死んだんだっての。確かお墓もあるはずだぜ?」


「……高尾っち?ちょ、意味わかんないんスけど」


「これから説明してやるっての」


和成は、いつの間にか強く握っていた私の手に暖かい手をのせた。


「――俺は、ここに入る前……ここに入ったのは10歳だっけ。入学する5日前に俺は死んだんだよ」


和成の表情を見れずに、私はうつむくだけだった。