小さな小さな、私達だけの秘密だった。
目の前にいる絶対的存在の赤司征十郎は、私を見つめたまま。
その視線に、私はゴクリと唾を飲み込んだ。
「ゲーム……?」
「そう、簡単なゲーム。そうだな、僕に対して名前だけというのは、無謀にも近いからな。君の友達に協力してもらってもいい」
「何を、言ってるの」
「僕とのゲーム内容だ」
クラス全員が静かに見守る中、征十郎くんは告げた。
「僕が鬼。君を捕まえたら終わり。簡単でしょ?君はどんな手を使ってでも逃げ回ればいいんだ」
血だらけの翼と美咲を見る。
ああ、もう私の答えは決まってるじゃないか。
「……わかった、やるよ」
「名前っ!!」
「和成……ごめん」
和成の今にも泣きそうな表情に声。
私まで泣きそうじゃないか。
そのとき、低い舌打ちの音がした。
「ほんとに、ムカつくね。高尾和成」
征十郎くんが和成を睨む。
「まーな。俺と名前は、生まれた時から一緒に過ごしてきたからな」
「……生まれた時から、ね。死の時もでしょ?」
「「っ……!!!」」
征十郎くんの言葉に私と和成が反応する。
「……赤司くん、何を言ってるんですか?」
「二人に、聞けばいいよ。さて、僕はそろそろ行くよ。ゲーム開始は、明日の10時だ。いいね」
テツくんの問いに答え、征十郎くんは教室から出ていった。
「名前!!」
「和成……」
未だに泣きそうな表情の和成に、私も涙が出そうだ。
「火神くん、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だけどよ……」
火神くんは汗をたくさんかいている。
すると、テツくんが寄ってきた。
「……あとでお二人の事情は詳しく聞かせていただきます。ですが、まずは安藤くんと原田さんを」
「うん、」
クラスの中にいる治癒のアリスを持つ友達の助けを借りたりして、二人は病院へと運ばれた。
「――――名前」
火神くんによって瞬間移動した二人がいた場所をじっと見つめていると、和成が話しかけてきた。
「俺はお前のことを恨んでねーよ。俺はちゃんとここにいるよ」
「うん。うん、そう、だね」
確かに和成は存在していた。
前 | 次