真っ赤な髪。
真っ赤な瞳。
そして顔に付着している真っ赤な血。
「――名前、やっと来たんだね」
この状況で優しい笑みを浮かべる征十郎くんに私は鳥肌が立った。
「なんで、こんなことを……」
征十郎くんのアリス……きっとあのアリスを使ったんだろう。
美咲と翼には、切り傷のようなものがたくさんついていた。
「…っ!おい、美咲に翼!大丈夫かよ!?」
和成が私たちのもとに走ってきた。
この状況に笑みを浮かべるはずもない。
なのに、ただ一人、赤司征十郎のみが笑みを浮かべていた。
「やあ、高尾。久しぶりだね」
「赤司、てめぇ。これ、お前が!?」
緑間くんのアリス、植物のアリスを使っているのかそこかしこに植物がうねっており、征十郎くんと私たちの間を隔てていた。
「うん、僕だよ。僕がやったんだ」
「なんでだよ!」
「君のアリスで見ればいいんじゃないか?」
オッドアイの瞳が見下ろす。
また、鳥肌が立った。
そして、和成が目を見開く。
「っ、赤司……名前を連れ去ろうとして…!?」
「そう、そこで名前の友人の原田美咲と安藤翼が抵抗するから、つい、ね」
「ついじゃねーよ!!」
ついでこんなになるまでやるなんて。
「名前、もちろん君は僕を選んでくれるよね?」
「選ぶ……?」
「そう、君は僕を選んでくれるよね」
にこりと笑う征十郎くん。
私は、恐怖で冷や汗を流すしかない。
「征十郎くんを選ぶ……?」
「そう、僕を。そこにいる君の友人でもなく、君が救った高尾でもなく、僕を」
征十郎くんの言葉に私と和成が反応した。
いや、せざるおえなかった。
「っ、赤司、お前っ」
「あはは、なんで知ってるのって顔してるね。知ってるさ。君たちのことなんて。だって、名前のことだからね」
知っている。
私と和成に何があったかを知っている。
「名前、君は僕を選ぶ気はないらしいね、だけどね、そんなことは許さない」
その瞬間、目の前に火神くんが立ちはだかる。
まるで征十郎くんを守るかのように。
「なっ、赤司!てめぇ!何すんだよ!」
「赤司くん、まさか火神くんをマリオネットのアリスで操ってるのですか!?」
テツくんが声をあげた。
きっとそのまさかだ。
「名前、君とゲームをしよう。僕と君の二人だけのゲームを」
冷たいオッドアイが私を見下ろす。
その目線からは逸らせない。
「――ゲーム?」
「そうだよ。君が勝ったら、僕はもう君たちに干渉はしない」
「征十郎くんが勝ったら…?」
征十郎くんは、何も答えずただ笑みを深めるだけだった。
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