「彼は、征十郎くんは、総代表櫻野秀一先輩に続く3つのアリスの持ち主」
「「「「っ!!」」」」
私は、自然と手を強く握っていた。
「でも、征十郎くんはこの学園でも権力がある人なの」
「なんでなん…?」
「それは、私も分からない。だけど、一つだけ分かることがある。彼に逆らっちゃいけない」
私の言葉に先ほどのことが思い出されたのかびくつく蜜柑ちゃん。
「…逆らったら最後です。彼は女も子供も関係ないですから、殺されます」
テツ君は、無表情で告げた。
「…まあ、名前っち以外には優しくないっスね」
「それは、私が彼の『お気に入り』だから…」
「っ、名前…」
今すぐにでも泣き出してしまいそうな和成の表情。
何度、彼にその表情をさせたくないと思ったか。
「………もう、帰ろっか」
私の言葉にみんな頷き、その場で別れた。
‐‐‐‐‐‐
そこは、異質の雰囲気を醸し出していた。
「無効化のアリス……佐倉蜜柑さん、ですか」
「はい。その子、僕の大切なものに親しく馴染んでしまったようで…」
こつん、と初等部校長が椅子から立つ。
「ああ、想像のアリスの名字名前だね。あはは、懐かしい。彼女の両親を思い出すよ」
「…名前の、両親ですか」
「そう。二人とも優秀だった。まさか、音使いの母親と夢使いの父親から今まで一人もいなかった想像のアリスが生まれるとはね」
「夢、使い…」
「そう。彼女の父親は夢使い。人にいろんな夢を見せて操ることが出来た。…『君』なら覚えているだろうと思ってたけど」
赤司は、顔を右手で覆う。
少し汗が滲んでいた。
「…すみません、少し記憶が、混濁していて…」
赤司よりも低い背の初等部校長がにやりと笑った。
「いいよ、征十郎くん。ゆっくり思い出せばいい。そしてまた、楽しいお話を聞かせて欲しい」
「……僕は、あなたが嫌いですよ」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
―もし、君が僕の唯一の存在だったとして。
君は、僕を愛してくれるだろうか。
僕の愛を返してくれるだろうか。
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