想像モンスター | ナノ


コツコツ…


靴音だけ響く。
そこは、暗闇だった。


「…名前」


ポツリと呟いた名前は闇に溶け込んだ。


「おい、赤司」


ふと、声をしたほうに目線をやるとそこには青峰の姿が。


「どうしたの大輝?」


「お前、あんま名前に関わるんじゃねーよ」


「…どうして?名前は僕のなのに?」


「あいつは、脆いんだよ。お前のせいで余計脆くなっただろ」


「…大輝に、何が分かるの?僕の何が分かるって言うんだ!!!」


バシッ


赤司から見えない何かが飛ぶ。


「うっわあ、あっぶねーよ、赤司!」


「名前が脆い?あはは、そんなこと知ってるよ。だって、僕が脆くしたんだもの」


「…名前のために、近寄るな。赤司、お前は名前に対して執着しすぎだ」


名前をおもちゃみたく扱う赤司。
さすがにそろそろ言わなきゃだと思っていた。
あの日、入学してきた名前の高尾を見て泣く姿。


「あいつには、傍に高尾がいなきゃだめなんだよ」


「っはっ」


あははは、と赤司が笑い出した。


「大輝、何言ってるの?僕に逆らうの?僕に逆らう奴は、たとえ大輝でも殺すよ?」


「っ!」


赤司の目がマジだった。
さすがに俺でもアリスでは赤司には勝てない。


「一つ教えてあげるよ、大輝」


「っ、なんだよ」


「僕は何でも知っている。特に名前のことはね」


「んなことは、知ってる」


「そうだよね。僕は、名前を愛してるんだよ。何に変えても」


「っ、」


「だから、名前以外はどうなってもいい」


狂ってる、と思った。
どうして、そこまでの感情を名前にぶつけるのか。
いつ、その感情を持ったのか。


「…ふざけてんな、お前」


赤司はにっこりと笑っていった。


「大輝ほどではないよ」


そしてまた、赤司はコツコツと闇へと消えていった。


「…俺ほどではないか、か…」


あはは、笑えてくるぜ。


「…俺は、もう」


名前の泣き顔が好きだった。