ふと、知っているアリスが使われた気がした。
「…ああ、名前がアリスを使ったのか」
それも近くで。
少年は、自分の直感を頼りに歩いてみることにした。
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「名前先輩が、死ぬまでですか」
「そう!まあ、永遠じゃないんだよ」
そのときはまだ、背後の気配に気づかなかった。
「名前のアリスは、想像できるものならなんでも出せるよ。無機物から命あるものまでなんでも」
聞き覚えのある声が背後から聞こえ、慌てて後ろを向く。
そこには、赤の髪が揺れていた。
和成たちもびっくりした顔をしている。
そりゃそうだよね。
私もびっくりしてるもん。
「…赤司、くん」
「違うだろ、名前。征十郎だろう?」
「征、十郎くん…」
まさか、こんなところにいるなんて。
「赤司っち!久しぶりっスね!どうしたんスか?」
「涼太にテツヤに高尾、そして名前、久しぶりだね。ちょっと歩いていたら知ってるアリスが使われたから気になって来てみたんだよ」
「…そういえば、赤司くんの『お気に入り』は、名前さんでしたね」
そうだ。
失念していた。
私は征十郎くんの『お気に入り』だ。
最近会っていなかったから。
「…そうだよ、名前。僕の許可も得ずに勝手にアリスを使うな」
「どう、して…」
「君はアリスを使いすぎるとすぐに体調を崩すではないか」
征十郎くんの言葉はごもっともだ。
「…あんた、誰や?」
そこで、蜜柑ちゃんが口を開いた。
「!ちょ、蜜柑!!」
和成が蜜柑ちゃんの言葉に焦る。
まあ、私もテツ君も涼太も焦ってるけど。
だって、征十郎くんにそんな口の利き方してはだめだ。
小さい子にも容赦ないもん。
「…君、僕にそんな口の利き方するの?」
征十郎くんが左手を蜜柑ちゃんにかざす。
やばい。
あのアリスを使われたら…
「僕の言う事を利かないやつなんて死ねばいい」
征十郎くんの手が蜜柑ちゃんに触れそうなときだった。
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