それは、昼休みのことだった。
「あ、お弁当忘れた」
「えー名前ちゃん忘れちゃったの?購買行く?」
「んー、行きたくてもお金ないんだよね」
「財布まで忘れちゃったの!?」
「違うよ。私の欲しいものとか言えば何でも買ってくれる兄がいるからさ。そしてテツヤが私に持たせてくれないの」
さつきちゃんは、うわあと言いながら引いている。
そりゃそうだよ。
高校生にもなって財布持ってないとかありえないもんね。
「テツ君のところに行けば?」
「嫌だよ、学校でしかテツヤから離れられないのになんであいつのところに行かなきゃいけないんだ。行ったら今日1日離してくれないよ」
「あー…」
想像出来るのだろう、さつきちゃんは納得した。
その時、廊下で女の子の黄色い声が聞こえた。
その声は、大きくなるばかりである。
「…名前、来たわよ」
「…そうだねー」
ため息しか出てこない。
私が扉を見るとそこには、真太郎くんがいた。
「名前、弁当を持ってきたのだよ」
「ありがとう、真太郎くん」
私の家族は、涼太を筆頭にイケメンぞろいだ。
もちろん、学校でも人気がある。
ファンクラブもあるとかないとか…
「んん、名前、ネクタイが曲がっているのだよ」
真太郎くんは、ネクタイを解きまた結ぶ。
女の私よりも手先が器用な真太郎くん。
あっという間に綺麗にネクタイがむすんであった。
「さすが、真太郎くんだね!あ、そういえば昨日私が集めているマンガの発売日だったから今日買いに行きたいんだけどお金くれる?」
「あのマンガは、昨日俺が買っておいたのだよ。だから名前が買いに行く必要はないのだよ」
「え、嘘ほんと!?ありがとう真太郎くん!家帰ったらちょうだいね」
「俺の部屋に来い」
「うん、分かった!」
「それと名前の洗濯物もタンスにしまっておいたのだよ」
「さすが、真太郎くん!いつもありがとう!」
真太郎くんは、生徒会室で征十郎くんが待っているらしいので足早に教室から去っていった。
そして、さつきちゃんの方へと振り向いたときにさつきちゃんに言われた一言。
「あんた、真太郎先輩のせいでダメ人間になってくよ」
私もそう思います。
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ルコウソウ…世話好き