ひどいと思った。
「……ねえ、何をしているの?」
「――ああ、名前かい?君こそそんな驚いた顔をしてどうしたんだい?」
夕暮れ時、夕日が差す空き教室。
私が通っているということは私の兄弟も通っていることだ。
その高校の空き教室で行われていた行為。
「何をしているの!?」
慌てて私は教室の中に入り、蹲っている人物へと寄る。
おかしいと思っていたのだ。
今日の朝はあんなに元気だった彼がお昼休みはいない。
友人に保健室に行くと言っていたので保健室に行っても来てなかったらしい。
「あ、あ、名前っ、ちゃん?」
所々、怪我をしている高尾くん。
私とテツヤの友人だ。
「高尾くん、大丈夫!?征十郎くん何してるの!?」
「名前……そんな奴に触れるな」
「そんなことも言ってられないでしょ!?高尾くん、怪我してるんだよ!?」
私は、制服のポケットからハンカチを取り出し、額に流れる血を拭く。
そのハンカチが、征十郎くんからの数年前の誕生日プレゼントだったことなんて、もう忘れている。
「名前」
「高尾くん大丈夫?痛くない?」
「名前」
「あ、口の中も切れてる?大丈夫?」
「名前!!!!」
静かな空き教室に、征十郎くんの声が響き渡る。
いつのまにか、私のすぐ後ろに征十郎くんは立っていた。
「征、十郎くん……?」
「――今まで、我慢してきたけれど。もう我慢できないよ。名前」
「何を、言ってるの?」
「僕はね、僕に従順な名前が好きなんだ」
「征十郎くん?」
「反抗なんて許さない。僕にはむかう名前なんて許さないよ」
ぐいっと、腕を引っ張られる。
「いったい、よ!」
「痛くしてるんだよ」
「征十郎くん……!離して!」
「――反抗は許さないって、僕は言ったぞ」
瞬間、私の目の前は真っ赤に染まった。
「名前ちゃ――――!!!」
高尾くんが、私の名前を呼んだ気がした。
だけど、もう、聞こえない。
「――ああ、僕の手で真っ赤に染まった名前はとても美しいよ」
「征十郎先輩……!」
「ああ、ごめんね。僕の手で名前を殺しちゃった。でも、やっと従順な名前を手に入れることができたよ」
「征十郎先輩!!」
「名前、名前。ああ、美しい。愛してるよ」
そんな、BADEND。
――――――
花蘇芳…裏切り