沈黙ガーデン | ナノ
どこから見てもそっくりだった。
お揃いの服にお揃いくつ。
髪色だけ違うが、同じ色の瞳。
きっと私が髪を染めれば、見分けることは出来ないんじゃないかというくらい、似ていた。


「――ああ、やっぱり僕とそっくりな名前はいいですね」


一緒のベッドに横になり、お互い向き合っている。
テツヤは、私の髪を優しく掴む。


「テツヤ」


「小さいころからお揃いにしてきたかいがありました。今では学校の友達も僕ら二人を必ずセットで見ますからね」


「テツヤ」


「全くもってうれしいですね。身長は僕は男なので高いのはしょうがないです。髪の長さもしょうがないです。だって、名前は僕のお姫様ですから」


何度呼びかけてもテツヤは話をやめる気配はない。
何か不安なことがあった時、情緒不安定な時、必ず寝るときに話し続けるということが起こる。
そして、いつにも増して独占欲が強くなるのだ。
どこでも一緒、離れるなんて許さない。
こんな時はしょうがないから、トイレは無理だがお風呂は一緒に入る。


「僕は、ずっとずっと名前とお揃いがいいのです。二人で一つがいいのです。だってこんなにも似てるんです。僕たちは離れられないのです」


髪を触っていた手は、私の頬を触り始めた。


「こんなにも、こんなにも一緒なんです。誕生日も血液型も、この体に流れている血も。細胞も。全てがお揃いなんです」


こんなに情緒が不安定なテツヤを見るのは久しぶりだ。


「ねえ、テツヤ。今日何があったの?」


「――僕、名前のこと愛しているんです。僕とそっくりな人物がいる、これは愛するほかないですよね」


「テツヤ、話を聞いて。何があったの」


「……ちょっと、言われました」


「何を言われたの?」


テツヤは、悲しそうに瞳を閉じた。


「僕たち双子は異常だ、と言われました。気持ち悪い、も。こんなにくっついているのはおかしい、と」


ああ、だからか。
テツヤは、私とテツヤの仲をとやかく言われることが好きではない。
そして、兄弟たちの中で一番正常でもある。


「僕は、名前とずっとお揃いがいいんです。そうすれば、ずっと一緒にいれます。必ず、僕と名前でセットで見てくれるんです」


「テツヤ」


「ねえ、名前。ずっと一緒にいてくれますよね?僕以外を選ばないですよね?僕だけしか見ないですよね?僕だけの名前ですよね?」


「……そう、だよ。ずっとずっと私はテツヤの双子の姉、だよ」


「名前っ……!」


ぎゅうっと私に抱き付いてくるテツヤ。
同じシャンプー、同じボディソープを使っているはずなのに、違う匂いがする。
テツヤの匂いがする。


「テツヤ、不安にならないで。いつまでも一緒だから。ずっと、一緒だから」


「はい、はい……名前、大好きです。愛してます」


テツヤは、そのまま寝てしまった。
悩みすぎて疲れたんだろう。
この時のテツヤの寝顔は、小さいころのようなあどけない寝顔だ。


「――私も、テツヤも姉弟離れできないね」


きっとこの先も。
死ぬまで、きっと。


――――――
クワ……共に死のう