沈黙ガーデン | ナノ
ああ、いつからこうしているだろう。
ああ、いつまでこうしているのだろう。


「ん、名前っち、好き。大好き。愛してる」


涼太と敦の部屋のベッドの上。
敦は今いない。
横になりながら、涼太に抱き付かれている。


「名前っちも俺のこと好き?」


「う、ん、好き」


さっきから……いや、ずっと同じ質問の繰り返し。
そういえば、いつからここにいるんだろう。
そう考えるのも鬱陶しくなっていた。


「俺も、俺も好き」


そして何度も口づけをされる。
体のいたるところに赤い印が浮かんでいた。
抵抗する気もない。


「俺ね、名前っちのこと、ちゃあんとお姉ちゃんだって自覚してるんスよ?」


「涼太……」


「血の繋がった正真正銘のお姉ちゃんだって。だって、こんなにも愛しているんスもん」


それが、間違った認識じゃないの?
そう思っても言い返す気もない。


「近親相姦、って罪でしょ?」


「そ、うだね」


「その意識があるからまだ名前っちは、素直になれないんスよね?」


「……」


「無言、スか。まあ、いいっス。籍を入れることはできない。だけど、そんなのいらない」


涼太が起き上がり、私の上に跨った。
正面に涼太の端正な顔が見える。


「ずっと、ずーっと死ぬまで一緒にいれば問題ないよね」


顔に笑みが浮かぶ。
ああ、この子の笑顔が好きだった。
この子の笑顔が微笑ましかった。


「ねえ、だから一緒にいよ、名前っち」


その好きだった笑顔から零れる言葉は、とても甘美でそれでいて、哀しかった。


「涼太、涼太」


「うん、何?」


涙が出てきたらしい。
涼太が私の涙を口で受け止めた。


「名前っちの涙はしょっぱいっスね」


「当たり前、だよ」


ああ、大好きだった。
大好きだった弟。


「名前っち、一緒に堕ちようよ」


「んむ、」


涼太の口づけを受け入れる。


「名前っち、一緒に狂ってよ。俺と一緒に。ずっと」


涼太の顔がひどく泣きそうだった。
いつの間にか、私の両手は涼太の頬にあった。


「えっ」


「ごめんね」


「っ、なんで謝るんスか」


「ごめんね、もう、いいよ」


「え?」


「もう、一緒にどこまでもいようか。どこまでも堕ちようか。狂っちゃおうか」


もう、いいよ。
もう、大丈夫だよ。
私がいるよ。


「うん、そうしよう。名前っち。愛してる。世界の何よりも」


一緒に狂えば、問題ないよね。


――――――
ルピナス…空想
thanks,アリス様