「…ちょ、ちょちょちょっ!!お母さん、ちょっと待ってよ!!」
「何よー名前。いいじゃない」
私の人生の終わりは、母親の一言から始まりました。
「嫌だよ!!行かないで!それか、私を連れて行って!!!」
「そうしたいのは、山々なんだけどねー」
「お願い!私をこの家に残さないで!!嫌だよ、あいつらと過ごすなんて!!」
「私も女の子一人じゃかわいそうだからって言ったんだけどね、征くんたちが『俺が面倒見るから、母さん達はお仕事に没頭して』なんて言うからー」
「(絶対ウソだ。絶対ウソだ。征十郎くんにだまされてるよ、お母さん!!)いいじゃん、それでも私を連れて行ってよ!!お父さんは!?」
「お父さんは、征くんに弱いからねー」
お父さん!!!
まさか、息子の征十郎くんに負けるなんて!!
これは、本気でヤバイ。
死亡フラグ立ちまくりなんだけど!!!
「だから、名前、ご愁傷様☆」
アデュー、なんて言いながらキャリーを引きながら玄関のドアを開けるお母さん。
待って!
親が子供にご愁傷様なんて言うなよ!!
「名前っ!」
ぎゅむっ
「ぐえっ」
女らしからぬ声を出してしまった…
そんなこといちいち気にしてたらこの家じゃやってけないよ。
「テツヤ、苦しい苦しい」
「もう、離しませんっ!!」
「痛いって!!ちょ、いたたたたた!!!」
どんだけ、力いれてんだ!!
双子のテツヤがお母さんが開けた玄関から入ってきてその勢いのまま私に抱きついてきた。
しかもお母さんとお父さんは微笑みながら見てるし!!
「じゃあ、名前行って来るわね」
「仲良くやるんだぞ?寂しくなったら電話してね?」
「父さん、母さんいってらっしゃい」
「征くんに真くん、大くんに敦くん、涼くんにテツくん、名前のことよろしくね」
「任せるのだよ。だから母さんたちも安心してくれ」
「五年後にお菓子待ってるからね〜」
結局、私はずっとテツヤに抱きしめられたままお母さんたちを見送った。
「名前、母さんたちが帰ってくるまでの5年間、これでもかってくらい愛してやるからな」
そう言って笑う我が家の裏の権力者、征十郎くんは言いました。
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イカリソウ…貴方を離さない