お昼を食べ終えた私達は、もうすぐ帰るらしく最後に観覧車に乗ることにした。
「……で、なんでみなさんも乗ってくるんですか」
私の右隣に座るテツヤが頬をふくらませながら言った。
その言葉に苦笑いしかでない。
「この僕がお前と名前の二人きりにさせると思うか」
「…思いませんね」
「だろう?そんな美味しい状況になんかさせない」
優雅に足を組みながら征十郎くんは言った。
それにしても観覧車にこんな大人数で乗るとは思わなかった。
しかも体がでかい兄弟たちばかりなので広く感じる空間が異様に狭い。
「うわー!眺めいいっスー!」
「だねー!」
末っ子の双子は、狭いにも関わらず景色を楽しんでいる。
真太郎くんは、小さく縮こまっているし。
大輝は、そんな真太郎くんをいじっている。
「…名前、」
くいっと私の服の袖を控えめに引っ張るテツヤ。
「なに?」
「楽しいですか?」
「楽しいよ、テツヤは?」
「楽しいに決まってます。名前が一緒なんですよ?」
「私もテツヤと一緒だから楽しいよ」
そう言うと無表情の顔を嬉しそうにする。
テツヤってあまり、表情を変えない。
でもその微かな表情の変化に気づけるのは双子である私の特権だと思う。
「…二人とも楽しんでいるようで連れてきてよかったよ」
「征十郎くん、ありがとう」
「いいさ、名前の喜ぶ顔が見れてそれだけで十分さ」
征十郎くんは、そう言って微笑んだ。
優しそうに微笑むもんだから、顔が赤くなる。
「おい、真太郎。大丈夫かよ」
「話しかけるのではないのだよ、大輝!」
ぎゅーっと本日のラッキーアイテムの熊の人形(私の抱き枕)を抱きしめる真太郎くん。
顔が青いのがこちらからでも分かる。
「真太郎くん、大丈夫?」
「……大丈夫なのだよ、心配するな名前」
私が声をかけると真太郎くんは、目元を赤くした。
本当に大丈夫かな?
――――――
それから、すぐに観覧車を降り、帰路についた。
「今日は楽しかったよ。ありがとう」
みんなの後ろ姿に言うと、みんなは歩みをやめ立ち止まった。
「お前が楽しそうでほんと良かった」
振り返ったみんなの顔が優しい笑顔だったのでつられて私も笑顔になった。
「ねー、テツヤ」
「なんですか?」
「またみんなで行きたいね」
「はい」
テツヤも優しい笑顔だった。
――――――
ローズマリー…思い出