征十郎くんの威力を見せつけられたジェットコースターを乗り終え、私達はお昼ご飯を食べにフードコートへと向かった。
「名前っち名前っち」
「なに?涼太」
涼太の方を向くとニコニコと楽しそうに笑っていた。
犬の耳と尻尾が見えるのは気のせいではないだろう。
「楽しい?」
「うん!楽しいよ!」
そう答えると、さっきよりも嬉しそうな笑みで微笑む。
「よかったっス!俺も名前っちと一緒だから楽しいっス!」
ぎゅーっと繋いでいる力を強くする。
ああ、本当に嬉しいんだなと思った。
「おーい、名前。何が食べてー?」
そう聞いてきたのは大輝。
いつの間にフードコートについたの。
「んー……テツヤ、テツヤは何がいい?」
「そうですね、ハンバーガーあたりですかね」
「私もテツヤと同じやつがいいな」
そう言うとテツヤは嬉しそうに顔を赤らめた。
「…っ!テ、テツ兄ばっかお揃いずるい…!お、俺も俺も名前っちと同じやつ!」
「涼太、何言ってんですか!名前とお揃いは僕だけでいいので涼太は違うやつにしてください」
「っ!嫌っス!お揃いがいーいー!」
あああ、また始まった。
私は二人の言い合いを無視し、大輝に「私たち三人、ハンバーガーで」と伝える。
「…また、言い争ってんのかよ」
「うん…あれ?真太郎くんたちは?」
そういえば、真太郎くんたちが見当たらない。
どこに行ったんだろ。
「あー、あいつらは敦がお菓子食べたいとか言って、菓子を買いに行ったぞ」
なるほどね。
そういえばそろそろ敦のお菓子のストックが切れるところだったな。
大輝は、私の頭を撫でてハンバーガーを注文しに行った。
こんなときに、大輝っていいお兄ちゃんだなと思う。
意外と大輝って高校でモテてるし。
あの時たま見せる優しさがいいと思う。
「…大輝が戻ってくる前にテツヤと涼太の言い争い止めなきゃ」
私は大輝の背中を見ながらすぐ後ろでまだ続いている言い合いを止める術を考えるのだった。
――――――
サルビア…家族愛