それから、私たちは遊園地の門をくぐり抜けやっとの思いで遊園地の地を踏みしめた。
「わー!遊園地だ!」
「名前、嬉しそうです」
手をつないでいるテツヤがくすりと笑いながら言った。
当たり前じゃないか。
初遊園地だよ!
心なしかテツヤも嬉しそうだ。
「それで征兄、どうするんスか?」
「そうだね、名前」
「なに?」
「今日は名前につき合うよ。どこに行きたい?」
私が行きたいところにみんなついて来てくれるらしい。
「んー、ジェットコースターに乗りたい!」
私の一言で、ジェットコースター乗り場へと向かった。
――――――
…うん、遊園地に来る前からわかってたけどさ!
この人達といると女の人たちからの視線が痛い!
「さて、ここで問題してくるのが名前ちんの隣だよねー」
そんな視線はお構いなしに、兄弟たちは敦の一言で熱い戦いが始まろうとしていた。
「そこは、双子の僕ですよ。当たり前じゃないですか」
ぎゅーっと腕に抱きついてきた片割れのテツヤ。
「何言ってんスか!そこは、俺っスよ」
涼太は、テツヤの反対の腕に抱きついてきた。
ちょ、君たち強く抱きしめすぎじゃないか?
「テツ兄も涼太ちんも何言ってんの?俺に決まってんじゃん。ひねり潰すよ?」
敦の顔と声が本気だ。
「はあ?そこは、兄ちゃんの俺に譲れよ」
「大輝こそ何を言ってるのだよ。名前の隣は俺に決まっているだろう」
真太郎くんは、メガネをくいっとあげながら言う。
片手には、今日のラッキーアイテムらしい熊の人形(私の抱き枕)が握られていた。
「…はあ、お前ら。ここでもか」
あからさまにため息をつく征十郎くんにテツヤが訝しげな顔を向けた。
「征十郎兄さんは、名前の隣じゃなくていいんですか?」
「テツヤ、何言ってるんだい?隣に決まっているだろう」
「…?」
私を含めた兄弟全員が征十郎くんの言葉に首をかしげる。
「だって、名前が僕を選ぶんだからな」
「……」
その言葉はすごい圧力だと思う。
もう、長男の威力すごい。
兄弟みんな、黙っちゃったよ。
「…じゃ、じゃあ征十郎くんの隣がいいな」
「だよね?名前」
笑顔が怖い怖い。
テツヤも涼太もこればっかりは文句を言えないらしく、悔しそうにしていた。
ある意味一件落着だ。
――――――
菫…小さな幸せ