遊園地を目の前にしたこの状況。
私は涼太に抱きつかれていて、右手にはテツヤの手。
そして周りには兄弟がいて、その目の前にはたくさんの女性達。
その中の一人に私は罵られ、兄弟たちはそれに怒ったらしく、一触即発状態。
助けてください。
「……名前がブスで貧相で取り得もなくて普通そう…?はっ、あなたたち何を言ってるんですか?名前を罵るなんて許しませんよ」
「テツ兄の言うとおりだし。お前、ひねりつぶすよ?」
テツヤと敦の言葉にその女の子は、怯む。
「…ほんとに、お前ありえねー。名前なんて、確実にお前らよりもいい女だろ」
「大輝の言うとおりなのだよ。お前らなんて話にもならない」
大輝は、頭をぼりぼりとかきながら冷たい目で女の人たちを見下ろす。
真太郎くんは、相変わらずそっけない。
「……名前を罵るなんて君、よくできるね。僕のかわいいかわいい妹を罵るなんて」
征十郎くんは、女の人だろうと手加減しないからな。
そして、涼太は私から顔を離し女の子に目線を向ける。
その目は、モデルなのか疑いたくなるような冷たい視線。
少し、ぞっとした。
「…君、俺のファンの子っスよね?」
「!あ、うん!」
涼太に話しかけられて嬉しいのか、頬を赤く染める女の子。
「あんた、ファンだからってゆるさねーよ?名前っちのこと悪く言ったんだから」
涼太の口から出たのは、冷たいナイフのような言葉。
「ありえないっス。俺の大事なものを傷つけたんスから、絶対に許さないっスよ」
涼太の冷たい言葉の数々にとうとう女の子は泣いてしまった。
お、女の子泣かすなんて!
「名前、」
涼太に文句を言おうとしたとき、テツヤに名前を呼ばれた。
「テツヤ…」
「名前、傷ついてないですか?あんな女よりも確実に名前のほうがかわいいですからね?名前のほうが素敵ですからね?」
「…うん、ありがとう」
テツヤは、必死に私をフォローしてくれる。
すると、頭に何か重みを感じた。
振り返るとそこには、大輝の手が。
「名前、愛してるぜ?」
「なっ!」
「あ、大輝兄、ひどい。俺も俺もー!名前ちん、愛してるよー」
「敦!」
敦は口元にポテチのかすを口の周りにつけながら愛を囁いた。
ちょお、恥ずかしすぎる!!
「名前、大丈夫か!?すまないのだよ!」
真太郎くんは寄ってきて私の身体をくまなく見て、私の頬にキスをした。
なんで、身体を見る必要があったのかわからないけどね。
そして、目の前に赤が現れた。
「…征十郎くん」
「名前、安心して。あんなうるさい雌豚どもにはちゃんとそれ相応の罰を与えるから」
「え、う、うん」
征十郎くん、そんないい笑顔で怖いこと言わないでよ。
「それで、涼太。元はお前のファンのせいだろ?」
「…そうっスね」
すると涼太は涙目で、私を凝視してきた。
ここまで顔が整っている男性の涙目見ると姉弟でもドキッとするのね。
「すんませんっス。名前っち…」
「いいよ。ほら、遊園地行こう?」
「〜〜っ!はいっス!」
そうして私たちは、遊園地へと向かった。
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水仙…うぬぼれ