「名前、疲れてませんか?」
電車で何駅か行ったところにある遊園地。
電車を降りたときに心配性のテツヤが聞いてきた。
「大丈夫だよ。ただ電車に乗っただけだよ?」
「ですけど…」
「大丈夫だって!ほら、行こう?」
私は家を出たときから繋がっているテツヤの手を引っ張る。
「あ、名前ちん、遅いよ」
「ごめんごめん!ってあれ?他の4人は?」
敦の周りに他の4人がいない。
あああ、敦、まいう棒が口元についてるよ。
「涼太ちんたちはーあそこー」
「へ?」
私とテツヤは敦が指差したほうに向くとそこには、たくさんの女の人に囲まれている征十郎くんたちがいた。
敦は、離しかけてくる女の人たちを無視し続けたらしい。
「…相変わらず、顔が整ってますからね。兄さんたちは」
「そうだね…」
ため息しか出てこない。
確かにうちの兄弟たちは、顔が整ってるからよく女の人に声をかけられる。
まあ、モデルの涼太がいるからな。
「…私たち3人で先に行くかね」
そう言って私たちは、遊園地へと向かおうとする。
「あああああ!名前っちいい!なんで俺を置いていくんスかー!」
たくさんの女の人たちがいる前で涼太は、整っている顔を涙で濡らし、私に抱きついてきた。
ちょおお!
お、女の人たちの目線がああ!!
「…ほんとに涼太の言うとおりだぜ、名前チャン?」
大輝が私のことをチャン付けで呼ぶときは、怒っている証拠。
大輝の後ろにいる真太郎くんと征十郎くんも心なしか怒っているのも雰囲気で分かる。
「ちょ、涼太…離れようか」
「嫌!嫌嫌嫌嫌っス!離れたくないっス!」
やめてくれ、さっきから女の人たちが私のことを殺すような勢いの目線が!
そのとき、かわいらしく長い髪を巻いている女の子が涼太に話しかけた。
「涼、涼太くん…その人、彼女じゃないよね?」
「…は?」
「そんなぶっさいくな女が涼太くんの彼女なわけないよね?」
…おい、ひどくないか。
私泣くよ?
確かに私の兄妹は私と違って顔は整っているけどもさ!
「…あなた、今なんて言いました?」
私の右手を握っていたテツヤが征十郎くん並の怖さを醸し出し、女の人に声をかけた。
「っ!涼、涼太くんが抱きついているその女はブスだって言いたいのよ!そんな貧相で取り得もなく普通そうな女が彼女なわけないでしょ!」
ぎゅうっと涼太の抱きしめている腕が強くなった。
それと同時に敦が食べているポテチがバリバリと音を立てて割れた。
あ、これは…
怒ってる。
私は、涼太の腕の中で冷や汗を流した。
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シャクナゲ…注意せよ