ずっとずっと嫌いだった。
勝手に僕の中に入り込んでくるし。
小さい頃は、ずっと嫌いだった。
「…それが今ではこんなにも愛しいんだからなあ」
「何言ってんですか、征十郎兄さん」
「ああ、テツヤ。あれ?名前は?」
ふとリビングで抹茶を飲みながら呟くと近くにいたテツヤに聞かれていたらしい。
「名前は、今お風呂なんで大人しく待っています」
「そうか、最近は風呂についていかなくなったな」
「ええ。さすがに僕も大人になったので。いや、一緒に入りたいんですよ?ですけど、名前に嫌われたくないので」
「なるほど、な」
テツヤの行動は、ほとんどと言っても過言ではないほど名前に嫌われないようにしている。
テツヤのすべては名前だもんな。
「征十郎兄さんは、名前のためならなんでもしますもんね」
「それは、そうだが。でも、ほかの奴らもだろ」
「…そうですね。特に敦と涼太は、何でもすると思いますよ」
「テツヤもだろ?」
「当たり前です。僕の全ては名前のためですから」
テツヤの言葉に少し、イラついた。
当たり前のように名前に愛をぶつける。
僕も愛を惜しみなく名前にぶつけるさ。
だけど、そんな存在は、僕だけで十分だ。
そんなことを思った。
「…征十郎兄さん。あなたがもし名前を傷つけることなんてしたら許さないですからね」
「…だろうね」
「きっと、誰よりも恐ろしいことを考えているであろう兄さん。そんな兄さんは、名前を壊さないで下さいね」
そう言ってテツヤは、立って風呂を上がっただろう名前のもとへと向かった。
「…まあ、一番恐ろしいことを考えてるだろうな」
テツヤの言っていたことは当てはまってるな。
「名前をこの手で殺してやりたいと思っているし、その死体を愛でたいと思ってる」
どんな姿であろうとも愛してやれる自信がある。
「さすがに、食べたりはしないかな」
テツヤなら食べそうだけど。
まあ、それくらい愛してるってだけだ。
こんな愛を名前を受け入れてくれるだろうか。
ああ、名前愛してるよ。
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桃…あなたに夢中