沈黙ガーデン | ナノ
「大輝なんて、大っ嫌い」


俺の始まりは名前の一言だった。


パチリ


「っ、なんだよ、夢かよ」


久しぶりに見た。
俺の始まりの夢。
俺を名前に縛り付けることとなった始まり。


「っ、嫌な夢だぜ。まったく…」


俺にとって忘れさりたい出来事。
やべえ、汗までかいてるし。


「……あれは、俺が名前を殴ったからだよな」


そう、忘れもしない俺が6歳で名前が5歳のときだ。


『っ、どうしよっ、ペルが死んじゃった』


ペルとは、俺が祭りで取ってきた出目金のことだ。
たった一匹だけ、取れて嬉しくて家で飼おうと思っていた。
それで、自慢のために名前に見せて30分経ったときだった。
名前の声に俺は、急いでバケツを見るとそこには、ぷっかりと浮かぶ出目金の姿があった。


『っ、なんてことしてんだよ名前!』


『ご、ごめんっ』


『ごめんじゃねーよ!俺が育てようとした出目金を殺しやがって!!』


『し、しょーがないじゃん!』


『しょうがなくねーよ!!』


俺は、怒りに狂っていた。
泣きそうな名前なんて知らなかった。


『っ、しょーがないよ!死んじゃったのが悪いんだもん!』


パシン…


『え、』


『ってめ、ふざけんじゃねぇよ』


ドスッ


『うぐっ』


バシッ、ゴスッ


俺は、一心不乱に名前を殴り続けた。


『だ、いき…』


『うっせーよ!』


この時はまだ名前が呼ぶ声にも応じられなかった。
その時に、テツが来た。


『っ!大輝兄さん!!何やってるんですか!』


『テツ…?名前!?』


そこには、俺に殴られて血を吐き痣だらけの名前の姿だった。


『大輝なんて、大っ嫌い』


名前は、俺を睨みつけて言ったのだった。
この瞬間から俺は、名前に縛られたのだった。


「あー、俺の馬鹿」


あの時の俺を殴りたい。
あのあとは征十郎やら真太郎やら母さんや父さん、テツに涼太に敦…家族全員に怒られた。


「今ではこんなに愛してんだけどな」


血の繋がった妹に向けるものではないと分かっている。
理解している。
だけど、止まらないこの気持ち。


「助けてくれよ、名前」


これを治せるのは名前しかいないことを知っている。


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ライラック…愛の芽生え