沈黙ガーデン | ナノ
汚したい汚したい汚したい。
名前を俺の全てで汚したい。
俺の色で染まればいいのに。
髪が顔が体が俺で染まればいいのに。


「真太郎くん?どうしたの?」


ふと、朝ごはんを作ってるときに名前に話しかけられてびっくりした。


「な、なんでもないのだよ!」


いかんいかん。
俺の欲が出てしまった。


「そう?それならいいけど」


名前は、冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに注ぐ。
そのコップは、俺が名前の8歳の誕生日にあげたものだ。


「もうすぐ朝ごはんが出来るからみんなを起こして来て欲しいのだよ」



「ごくんっ。りょーかーい!」


牛乳を飲み終えた名前は、コップを流し場に置き、キッチンから出て行った。
俺は、そのコップを見つめる。


「名前が口つけたコップ…」


俺は、コップを持ち名前が口つけただろう場所を舐める。


ペロリ


なんか、甘い。
普通のコップが甘く感じる。


「ああ、愛しい」


名前。
俺の名前。


「んっ、」


ペロリ、ペロ


どんどん舐めていく。
名前が口つけたものは甘いのだよ。


「……真太郎」


「っ、せ、征十郎!!いつの間にいたのだよ!!」


ほんとにいつからいたのだよ!!
俺のこの行動を見られたりしたら…


「今来たばかりだよ。名前が朝ごはんだって起こしに来たからね」


「そうか…」


良かったのだよ。


「ねえ、真太郎」


「っ、なんなのだよ」


「いや、お前も名前が好きなんだなと思ってな」


征十郎は、言い逃げをした。
なんだったのだよ、征十郎は。


「名前を好き?ふん。当たり前なのだよ」


小さいころから名前のことを愛しているのだよ。
何度夢見てきたことか。
ずっとずっと汚したいと思っていた。
世話焼きの兄だと思わせて、いいフリをして。
それでも心の中ではずっと汚したいと思っていた。
匂いも俺の匂いになればいいのに。
いっそのこと俺と溶けあえばいいのに。
そんなことをずっと思ってきた。


「真太郎くーん!みんな、そろったよ!」


「…朝ごはんも今出来たところなのだよ。運ぶのを手伝ってくれ」


「わかった」


ああ、今この瞬間も俺で汚したいのだよ名前。


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ダリア…不安定