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淡い桜を見上げては



映画第二章を見ての衝動書き
主人公はもちろん千鶴です
ssl設定・千鶴前世の記憶なし


綺麗な桜が咲いた季節だった。
学校に咲く桜を見ながら、私は少し切なさを覚えた。


「――ねえ、知ってる?」


「何ですか、沖田先輩」


「僕ね、桜が散るのを見るの嫌なんだ」


隣に立った沖田先輩が言った。


「……なんでですか?桜は散るのを含めて桜なんじゃないですか」


「なんか、短い期間で散っちゃう花びらが儚い命のように思えてさ、昔を思い出して嫌になるんだよ」


いつもの沖田先輩らしからぬ表情で桜を見つめる沖田先輩。


「あ、千鶴に総司こんなところにいたのかよー!」


「平助くん!」


平助くんが私たちを見つけて走ってきた。


「何してんだよ、花見か?」


「まあ、ね。平助くんもいっしょにどう?僕と千鶴ちゃんの三人で」


「一緒に見るよ」


そして、私たちは三人黙って桜を見つめる。


「――ああ、なんか昔を思い出すな」


「ああ、やっぱり平助くんも思った?」


「総司も?」


二人して何を言っているんだろう。
この桜を見て何か思い出すものでもあるらしい。
でも昔と言っても、つい最近じゃなくて、遠い、遠い昔のことだとなぜだか思った。


「千鶴」


「ん?」


「千鶴ちゃん」


「何ですか?」


二人して、そんな顔してどうしたの。
なんでそんなに。
そんなに、泣きそうなの。


「「置いていっちゃってごめん」」


その言葉を聞いた瞬間、私は涙が出ていた。


「な、んで。涙……」


拭っても拭っても、止まることを知らない。


「ごめんね、もう、置いていったりしないから」


「せん、ぱい……」


「俺ももうお前を独りにしないから」


「へ、いすけくん……」


ああ、心のどこかでその言葉を嬉しく思う自分がいた。
その、言葉を。
その言葉を、ずっとずっと待っていたのだ。


「へ、んですね……二人が何を言ってるのか、辻褄が合わない、のに……でも、嬉しくて……その言葉を、ずっと聞きたかった、自分が、いて……」


二人は優しく私の涙をぬぐう。
そして、優しく笑ったのだ。


「待たせて、ごめんね」


「千鶴、ありがとう」


その言葉を聞いただけで私は、幸せな気持ちになった。


title by言葉が紡ぐ世界

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