隣り合っては死に至る
※死ネタ・ちょっといやかなり危険
やっぱり、私には無理だったのだ。
「――はい、おーしまい」
カチカチと時計が時間を刻む音しか聞こえない。
あとあるものは、ベッドにテーブル。
そして、ナイフだ。
それは、私を殺すためのナイフ。
私を血で染めるためのナイフ。
彼はそれをわざと見せつけるかのように舌先で舐めた。
「さて、どうするんスか?このままだと名前っち死んじゃうよ?」
「どうするもなにも、どうにもできないでしょう」
「あはは、その通りっス」
彼――ただの隣の席の人物である黄瀬涼太は、ナイフをちらつかせながら私の目の前に来る。
そして、ナイフを首に近づけた。
ごくり、と唾を飲み込む。
「ねえ、一つ聞きたいことがあるの」
「なんスか?」
「私を殺す理由は?」
すると、彼は綺麗な笑顔で笑った。
「――愛しているから、名前」
瞬間、ナイフは私の首元めがけて振り落された。
「愛してるから、殺したんスよ。ねえ、愛してる大好き。もう、俺を助けて欲しくて。ああ、名前っちは死に顔も綺麗っスね。このまま、このままにしたいけど、腐敗が進んでいくし……臭いもしてくるし……やっぱりホルマリン漬け?でもそれじゃ、液体の中に名前っちを一人にしちゃうし……食べるのが無難スかね。ああ、それとも剥製にするとか?でもなあ、生身の名前っちを触りたいし……食べるのがやっぱり、名前っちを一番近くに感じられるスかねえ……ま、とりあえず、当分はこの死体のまま名前っちを愛してあげる」
title by誰花
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