櫻籠り哀歌

君と僕の明日を見た

部屋に行く途中で見慣れた、着物姿の背中が見えた。


「あ、真!」


「名前じゃねーか。あれ?涼太は?」


「まだ学校」


彼は、私と涼太二人専用のお手伝いさんの花宮真。
よく無愛想だけどいい人です。


「ふーん。じゃーさっさと着替えろよ」


「はいはい」


「はいは、一回でいいんだよ」


「はーい」


まったくと言いながらため息をつく真。
ふと、廊下から見える大きい庭を見る。


「涼太、早く帰ってこないかな…」


ーーーーーーーー


「…運命、か」


「だから、邪魔しないでくださいっス」


目の前に久しぶりに見る元仲間たち。
俺が裏切った仲間たち。
まあ、裏切ったことに何も思わないけど。


「今の時代は、俺と名前は、結ばれることもできるんス。というか、結ばれなきゃいけない」


そう。
たとえ、辰也っちがいたとしても俺が名前と結ばれる。
だって、双子だ。
双子の方が力が強い子が生まれるって言われてるし。


「…おい、黄瀬」


「なんスか、青峰っち」


ギロりと俺を睨むように視線を上げる。


「いつまでも名前がお前の元にいると思うなよ。今は、お前の元にいるが俺たちとお前は違う」


「…」


「俺たちは名前と絶対に切れない絆があるんだよ」


「っ!」


青峰っちの目がまっすぐ見れなかった。
そう、どうやっても青峰っちたちの絆には勝てない。


「だから、嫌いなんスよ。お前たちなんか。名前は、俺のモノっス。俺のモノっスよ!」


名前を渡したくない。
その思いだけだ。
今は、兄妹として生を受けても、名前が大好きだ。
両親や祖父母、先祖の近親婚を気持ち悪いなんて思わない。
当たり前だと思った。
だって、そのおかげで名前を縛れるのだ。


「…じゃあ、またっス。会う日がないことを祈ってるっスよ」


俺は、名前と同じ移動術を使って戻った。
彼らがどんな表情をしてるかなんてどうでもよかった。