彼の言葉がどれだけ私を救ったか。
貴方は、知っているでしょうか。
――――――
「――怖くないですよ」
「え、なんで…!!話を聞いたんでしょう!?」
「聞きました。ですが、僕は貴女たちが衝動でそんなことをするはずがないと思いました。ちゃんと理由がある、と」
彼の言葉に目を見開いてしまう。
なんで、だろう。
その言葉で、何かが救われた気がした。
「そうでしょう?」
「―――うん、理由ならちゃんとあるよ」
「それを、僕に話してはいただけませんか?」
「え、」
「無理だったらいいです」
びくり、とした。
だってまさか理由を聞こうとするなんて…
「だったら、また次会えたら教えてあげるよ」
「え?」
「また、君に逢えたら教えてあげる。私たちのことも、あの夜のことも」
私は、彼を真っ直ぐに見て言う。
綺麗な、空色の瞳。
「…綺麗な、空色の瞳ね」
なんでも、吸い込まれてしまいそう。
「……僕は、この空色が嫌いですよ」
「どうして?こんなにも澄んだ綺麗な空色なのに。羨ましいよ」
私は、無意識に彼の頬を撫でた。
「えっ」
「あ、ごめん…!!」
「い、いえ」
どきりとした。
急に彼女が、僕の頬を触ってきた。
異様に冷たい手だった。
「……でも、ありがとうございます。貴女のその言葉で、僕はこの色を好きになれそうですよ」
本心だった。
彼女の言葉は希望を与えてくれる。
「――では、さよならしようか」
「行かれて、しまうのですか…?」
「うん。兄が待ってるし」
「また、会ってくださいますか?」
「それはどうだろう。運命にかけようか。私と、君の運命に」
私は、彼に背を向ける。
彼が声をかけようとも私は足を止めることはしなかった。
「(――だけど、絶対に逢える気がする)」
私は空色を思い浮かべながら帰路へと着いた。