「……名前も行ったことだし…、久しぶりっスね。みなさん」
目の前の涼太がさっきと表情を変え、にこやかに言った。
「っ、」
先程までは、姫様を愛しそうに抱きしめていたのに今は、上辺っ面だけの笑みを浮かべている。
「前の時代振りっスね。まーた、俺らの前に出てきたっスね」
「…まさか、黄瀬くんが名前の双子の兄とは」
「俺も驚きっスよ。物心ついてからいつも隣に名前がいるんスもん」
あの頃と変わらない声に顔に少し懐かしさを覚えた。
だけど目の前にいるのは、裏切り者。
僕らから姫様を奪った裏切り者。
「だから邪魔するな」
「…どうしてだい?涼太。僕らは姫様の従者だ」
「赤司っち。俺らにはあんたたちは必要ないんスよ」
「ふざけんなよ、黄瀬っ!」
「ほんとにお前は落ち着くのだよ、青峰」
大輝は、キレるのが早いな。
「今の名前は、赤司っちたちのことなんて忘れてる。そして、俺は双子の兄として生を受けた。これはもう、運命なんスよ」
「運命、ですか」
「そうっスよ黒子っち。今の時代の松奏院家は、この世間で唯一許されていることがあるんスよ」
「…なんですか」
そして、僕らは涼太の言葉で驚愕の表情をすることとなる。
涼太が人懐っこい笑みで笑う。
「近親婚っスよ」
「「「「「!!!!」」」」」
「な、何を言ってるんですか。黄瀬くん!」
「…事実を言ったまでっス。現に俺の父さんや母さんも兄妹だし、おばあ様とおじい様も兄妹っスもん」
「っ、そんなこと、有り得るはずが…」
「有り得ちゃったんスよ、赤司っち。俺もびっくりっスもん」
ふざけるなと叫びたかった。
前の時代まではこんなことは、なかったはずだ。
それが今の時代では、あったなんて。
しかも、涼太と、か。
「だから、俺らは運命で繋がってるんスよ。君達よりも強くね」
ドクリと心臓が強く脈打った気がした。