櫻籠り哀歌

役者は揃った、始まりだ

何かが近づいてくる音がした。


――――――


「おはよう、名前。いい夢が見れたかい?」


目を開けるとそこには、優しく微笑む櫻の顔があった。


「さ、くら」


「うん、なんだい?」


「……なんでも、ない」


私は櫻の腕から離れる。
すると、私と同じように眠っていたテツヤと涼太が起き始めていた。


「―――涼太、」


「名前っ!?」


涼太の元へ行こうと足を踏み出すと、誰かに腕を回され行けなくなった。


「ちょ、櫻!?」


「ダメ、行っちゃダメ。名前は僕の傍にずっといて」


「なんで、櫻。涼太は、私の……」


「双子の兄?そしたら、僕は?僕も名前の双子の兄だよ?」


櫻の言葉に、私は止まった。
そういえば、二人とも私の兄だ。
でも、双子。
なら、どっちが本物?


「名前っ…」


焦った涼太の声が聞こえた。


「涼、太」


あんなに、涼太のことを愛していたのに。
なんで、今は空っぽなんだろう。


「――涼太、もう終わりだよ」


びくり、と肩を揺らした涼太。


「黄瀬くん…」


「黒子っち…」


もう終わり?
どういうこと?


「さあ、真実を話そうか。ねえ、涼太?」


その時、ちょうどよくもう一人の櫻と赤に紫、青に緑のカラフルな髪の人たちが来た。
この状況に、困惑している。


「――役者もこれでそろった。さあ、始まるよ」


櫻はわたしをぎゅっと抱きしめた。


「全ての始まりは、名前とそこにいる黒子テツヤが出逢ったことからだった…――」


テツヤが、ごくりと唾をのんだ。