櫻籠り哀歌

綺麗に切り取られた世界

ずっと、君だけを思って生きてきた。
忘れもしない君との日々。
忘れられるはずが無かった。


‐‐‐‐‐‐


「涼太ー!!」


ぎゅむっ


「わあっ名前っ!どうしたんスか?」


「一緒に帰ろうと思って!」


放課後、カバンを持った涼太を発見し、後ろから抱きついた。
あー、なんで同じ兄妹なのに涼太からいい匂いがするんだろう。


「丁度、俺も名前に言おうと思ってたんスよ。辰也っちにも名前と一緒に帰って来いって言われてたっスから」


「そうなんだ!じゃあ行こう?」


私たちは二人で並んで帰る。


「…あれ?あそこ、人だかりが…」


校門付近で人だかりが出来ている。
何があるんだろう。


ドクンッ


心臓が強く脈打った。


「…あ、涼太様と名前様よ!」


人だかりの一人が私たちを見つけた。
すると、人だかりが一斉に私たちを向いてお辞儀する。
…すっごい恥ずかしいんだけど。
隣の涼太なんて、すごく苦い顔してるし。


「…名前?」


ドクンッ


また、強く脈打った。


「…姫、様?」


人だかりの真ん中で私たちにお辞儀をしていない5人を見つけた。
その中の空色の髪の子が私の名前を呼んだ。
しかもその5人は全員目を見開いている。


「…あれ?名前、知り合い?って、なんで泣いてるんすか!?」


「知らない人たち……だけど、なんか、懐かしくて勝手に涙が…」


涙が止まらない。
そして、涙を拭っているそのときだった。


ヒュッ


目の前に何かが通った。


「っ、涼太!!!何故、お前がここにっ!!!」


赤が目の前まで迫っていた。
その人は、右手に日本刀を持っていた。
紅の珠もついている。


「(あ、その紅の珠…)」


懐かしい。


「涼太っ!!よくも、よくも姫様をっ!!!」


彼の刀が炎に包まれる。
それを涼太に向かって振り上げた。
涼太は、その行動を冷たい目で見ていて逃げる素振りもしていない。
ちょおお、殺されるって、涼太!!


「死ねっ!!」


私は、いつの間にか身体が動いていた。