ふと、ある建物の屋根の上。
そこには、5人の少年の姿があった。
「血に塗られし、三千年の記憶」
「今、再び甦る」
一人の青年が立ち上がり、刀を抜く。
その刀には、赤の珠がついていた。
「さあ、僕たちの姫様をお守りするぞ」
愛しい愛しい、我が主よ。
‐‐‐‐‐‐
「今日から高校生ー!」
「名前、どんだけはしゃいでんスかー!」
「だって、今日から涼太と同じ高校生なるんだよ!?嬉しいに決まってるよ!」
はい、こんにちは。
私は今日から帝光高校に入学します。
そして、私と今一緒に歩いてるのが、松奏院涼太。
私の双子の兄です。
私たちの松奏院家は、代々昔から伝わる名家らしく私は家でお姫様として扱われてきた。
涼太も子息として丁重に扱われてきた。
だけど、私は、高校生になるまで松奏院家で軟禁生活をしてきた。
おばあ様とおじい様を説得し、私は今日から念願の学校生活を送れるのだ。
「でも、よくあのおばあ様とおじい様が許してくれたっスね」
「うん!だって私がんばって説得したよ?あと、辰也くんも一緒に説得してくれたし」
「辰也っちも!?」
「うん!」
それなら、許してくれるはずっスねーと頷きながらと言う涼太。
辰也くんとは、私と涼太の2つ上の兄である。
辰也くんは、立ち振る舞いなどが素晴らしくおばあ様とおじい様のお気に入りなのだ。
「…まあ、ここら辺で松奏院は有名っスから気をつけてね?」
「大丈夫だよ!涼太がいるし!」
「任せてくださいっス!名前のことは俺が守るっスよ!」
そう、ここら辺では松奏院は有名だ。
お金持ちだし、一番の権力者である。
そして、崇められる存在であり、恐れられる存在でもある。
「頼もしいな、さすが私のお兄ちゃん!」
私は嬉しくて、ぎゅうっと涼太に抱きつくと涼太も抱きしめ返してくれた。
「名前は、特別っスからね!」
身内の私でも顔を赤くしてしまうくらいの素敵な笑みを見せる涼太。
もう、大好きだよ!!
「あ、松奏院家の涼太様だわ!」
「!あちらには、妹君の名前様もいる!!そういえば、今日からこの帝光高校へ入学なさるって聞いた!!」
校舎に入ると、生徒からの目線が私たちのほうへと一斉に向く。
そして、頭を下げられる。
「…みなさん、顔を上げてくださいっス。ほら、名前もびっくりしてるし…」
涼太は苦笑いを浮かべて、頭を下げている生徒…というか、この場にいる生徒全員に言った。
「…そんな、恐れ多いこと出来ません」
「そうです、あなた様方は神聖な松奏院家の方々なのですから」
一向に頭を上げる気配の無い生徒達。
相変わらず隣にいる涼太は苦笑いを浮かべたままだ。
こういうときに私は、自分が松奏院家であるのが嫌になる。
彼らが恐れたりするのは、まあ分かる。
だって、松奏院家の直系の人にはみんな摩訶不思議な力があるのだから。
「…涼太、行こう?」
「…そうっスね」
私の呼びかけに涼太は頷き、頭を下げている人たちを無視して校舎内へと入っていった。
これから、運命の出逢い…いや、再開が待っているのにも知らずに。