櫻籠り哀歌

ずっとずっと昔のお話

ずっとずっと昔の話。
あるところに桜の似合うお姫様とそのお姫様を守る5人の従者がいました。
お姫様はその従者をとても大切に思っていて、従者達もお姫様のことをとても大切にそして愛していました。
お姫様に害なすもの全てを除いてきました。


『あなたは、僕らを救ってくれた人。この命が尽きるまでお仕えいたします』


従者の5人はお姫様に絶対的な忠誠を持っていました。
でも、ある日のことです。
お姫様が誰かに攫われてしまったのです。
その犯人は、朝廷の帝。
この国を支配している帝は、好きなお姫様を攫ってしまったのです。


『っ!絶対、絶対に助けに行きますから!絶対に!』


彼らは、血眼になってお姫様を探します。
ですが相手は帝。
簡単にお姫様を見つけ出して救うことはできません。


『…っ、たとえ、骨が折れて砕けようとも、内臓が破裂しようとも、手足が無くなろうとも、目が見えなくなっても、声が聞こえなくても、声が出せなくても、絶対に姫様を失わせはしない!』


従者5人は、死を覚悟しながらも姫様を救い出しました。
お姫様は、ところどころ怪我をしていて、顔には殴られたような痕もあります。
それに、従者は救えなかったと嘆きました。


『……いいよ。ありがとう。私を助けに来てくれて、救ってくれて。私はこんなにも主人思いな従者に囲まれて幸せだよ』


お姫様は、涙を一粒流しながら笑って言いました。
それに、従者はこんなにも純粋で美しい我が主を悲しませたくないと強く思いました。


『姫様、』


ある一人の少年が声を出しました。
その少年は、真っ赤に燃える火のような赤の髪をしていました。
その瞳は左右違う色。


『――僕たちに、姫様に永遠に縛る絆を、下さい!』


その願いは、生まれ変わってもお姫様から離れられないということを意味しています。
ずっとずっと来世も来来世もお姫様に縛られるということ。


『っ!嫌よ!私はあなたたちを縛り付けたくない!』


『お願いです、姫様!僕らに絆を下さい!姫様をずっと守れるように!生まれ変わっても必ず姫様を守れるように!』


お姫様は、考えます。
果たして、彼ら5人の魂を私に縛っていいのか。
自由を無くしてもいいのか。


『…だめ、だよ。私は君たちに自由に生きて欲しい。まあ、紫原家と黒子家は無理だけど…でも、せめて強制的に私に縛り付けたくない』


お姫様は、拒否を示します。
ですが、従者も引きません。


『名前、僕たちはいつの時代も名前を、迎えに行きますからっ。どんなときでもあなたの傍にいますから!』


空色の髪の少年は、刀を鞘から取り出し自らの腕を切りつけます。


『!テツヤっ!まさかっ!』


お姫様は、従者の行動に目を見開き驚きます。
空色の髪の従者に引き続き、他の4人も自らの腕を切りつけます。


『……名前、あなたが拒否を示しても僕らには儀式を強行手段で実行できる方法があります』


従者5人は、お姫様の周りに均等につき、腕から流れ出る血を刀に流し、その刀を地面に突き刺します。


『っ!やめて!お願い!わたしは、わたしはっ…!!』


涙を流し必死に儀式を止めようとするお姫様の声は、従者には届きません。


『…姫、様』


5人は、地面に刺した刀を抜き、お姫様に向かって切っ先を向けます。
お姫様は、この儀式を知っているので次に従者達がすることは想像でき、涙が止まりません。


『……ごめん、ね』


ぼそりと言った言葉は小さくて従者達には届きません。
従者達はお姫様に斬りつけました。
お姫様は、涙を流して血を流します。
彼らはぶつぶつと呪文を唱えます。


『っ、やめ、てよ!』


彼らは止まりません。
すると、お姫様は心臓が痛むらしく服を掴んでうずくまります。


『……名前、もう戻れませんよ』


彼らの手には、お姫様の血で作られた色とりどりの珠がありました。
その珠を見てお姫様は、ふわりと笑ってその場に倒れました。


さてさて、これは昔のお話。