赤司さんは、刀で自分自身を斬りつけた。
腕から滴る血。
「思い出させてあげるよ。無理やりにも…返してもらうよ」
「ちょっ、赤司っち!!!」
涼太が慌てて赤司さんに駆け寄るが、もう遅い。
彼は、自らの血を紅の珠に落とした。
その瞬間、
キィィィィイイィィイイイイイン
ひどい耳鳴りが私を侵す。
「いったあああああ」
「名前!?大丈夫っスか!?」
「いや、だっ、いやだいやだいやだあああ」
頭が割れるほど痛い。
鈴の音の頭痛の何倍の痛さだ。
「あははははは!思い出すといい!僕らの思い出を!声を!思いを!絆も!愛も!全て全て!」
紅の珠が赤司さんの血に染まるたびに痛みが増す。
無理やり脳の中の記憶を呼び起こされる。
思い出したくない。
思い出したくない。
思い出したい。
思い出した、い…?
「…名前っ!赤司っち、てめぇっ!!」
「ざまあみろ、涼太。僕らには無理やり思い出させる方法があるのさ!」
高らかに笑う赤司さんの声が頭に響く。
こんな形で、思い出すのは嫌。
そう、誰かが言った。
「…うっ」
「あはは!姫様、ゆっくりゆーっくり眠るといい。そして早く思い出して目を覚まして!そして僕だけを見て!そうすればなんでもしてあげるよ!あはは」
「名前っ!!!」
目を開けない名前の姿に、涼太が焦る。
ぎゅっと抱きしめ、何度も名前を呼ぶ。
「名前名前!」
「愚かな涼太。もう、お前になんか奪わせないよ」
冷たい声が涼太の頭上から降り注ぐ。
そのときだった。
辺りが不思議な空気で包まれた。
「――面倒なことをしてくれたね」
その声は、あの暗く重苦しい部屋で聞いたことのある声だった。