櫻籠り哀歌

幸せの先にあるもの

涼太の涙を見て、拭いたくなった。
私は、赤髪の彼の腕を振りほどき涼太へと駆け寄る。


「っ涼太!」


「…名前!?」


私が駆け寄ってきたことに目を見開く涼太。
私は、涼太の頬に手を当て涙を拭ってあげる。


「…涼太、私ね。涼太のことが大切みたい」


「え?」


「涼太のこと愛してるみたい。ごめんね、双子なのに」


私は涼太と目があわせられなくなって、下を向く。
すると、涼太は無理やり私の顔を上げて、口づけをした。


「っなっ!」


赤髪の彼の声が聞こえた。


「…名前、俺らは双子でも兄妹でも結ばれることが許される関係なんス。だから、その思いを止めないで」


また、涼太は私に唇を合わせる。


「…涼太、涼太」


「なんスか?」


「…私ね、」


「うん」


「今なんか幸せなんだ。何でだろう、だけど幸せだけど、なんか寂しいの」


「…え?」


幸せなはずなのに寂しい。
後ろの彼と空色の髪の彼の顔が忘れられない。


「…大好きなんだ。『彼ら』が」


私の言葉に涼太が目を見開く。


「…『彼ら』…?」


「もう、思い出せないけど懐かしいくらいにしか思い出せないけど、彼らとの絆…」


どこに消えてしまったんだろうか。
何故急にそんなことを思ったのだろうか。
分からないけど。


「…姫様」


「あ、赤司、さん」


「僕らとあなたの『絆』、壊せるようなものじゃない」


「!赤司っち!」


涼太の焦り声が響く。
目の前の赤司さんが刀についている紅の珠に触れた。
その、珠…


『この珠にかけて、あなたを探し出しますから』


赤司さんの瞳が暗くなった気がした。


「…もう、無理やりでも思い出させてあげる」


赤司さんは、刀を取って自分の身体に傷をつけた。