櫻籠り哀歌

赤と黄の語らいに

こつり、


後ろで靴音がした。


「涼太」


聞き覚えのある声。
俺は、自嘲気味に笑い後ろを振り返った。


「…今日は、和装じゃないんスね。赤司っち」


振り返った先にいる、彼―赤司っちは、余裕そうないつもの笑みで笑っていた。


「大輝たちがお世話になったそうじゃないか」


「ああ、あれっスか。どうせ、名前は青峰っちのこと覚えてないっスよ」


「…どういうことだ」


「名前に昔の記憶を思い出させないように、術で消してるんスよ」


「…!」


驚いてる顔をしてる赤司っち。


「だから、今回は絶対名前を赤司っちたちに渡さない」


「…無駄だよ」


「無駄じゃない!」


「僕たちには、絶対に切れない絆がある。お前らにも絶対に破れない」


ぎりっと唇を噛みしめる。
また、それ。
俺も知らない、名前との絆。
それにひどく嫉妬心が出る。


「俺は、それを断ち切るために行動してきたんス」


「無理だよ」


「!!!」


「涼太には無理だよ。これは、他人が断ち切れる絆じゃない」


真っ直ぐ赤司っちの瞳を見れない。
嫌だ嫌だ嫌だ。
聞きたくない。


「…涼太、絶対に姫様は思い出すよ」


「っ、ふっざけんな」


「ふざけてない。僕らも罪深いけど、涼太も罪深いよね」


「!は、何言ってんスか?」


俺が罪深い?
何が?


「いつか、その血に飲み込まれないようにね」


「!」


…俺の秘密を知っている?
赤司っちが?
いや、そんなはずはない。
これは名前も知らない秘密。
知ってるのは、真っちと『あの人』だけ。


「あはははははははは」


もう、笑いしか出ない。
俺は、名前との二人の世界を壊すだけだ。


「…涼太?」


「無駄無駄無駄無駄!無駄っスよ。俺は、一人じゃ存在出来ないんス」


「…何を、言ってるんだ?」


「俺は、俺は『代わり』じゃない。俺は、太陽になるんス」


スッと、光が出てきて俺の刀、『雷雅羅鬼一』を手にする。


「!涼太っ」


赤司っちが、愛刀『焔叢雲』を手にするのを無表情で見た。


「俺を見てくれないやつなんて大嫌いだ。だから、俺は」


壊すんスよ。