櫻籠り哀歌

蝋燭が揺れる部屋

「…赤司くん」


とある、屋敷の中。
蝋燭に火をつけただけの部屋で、5人の少年が刀を片手に座っていた。


「…まさか、黄瀬が名前の双子の兄だなんて驚きなのだよ」


「しかもこの時代の松奏院家は、近親婚なんでしょー?」


その時、舌打ちをした青峰が立ち上がった。


「大輝」


「俺は、絶対、黄瀬を許さねぇ」


「大輝」


赤司の静止の声も聞かない。


「名前は、俺らのだ。あいつになんか渡せるかよ。俺らは俺らは…」


青峰の手が力いっぱい握りしめられる。
力を込めすぎたせいか爪で皮膚を切ったらしく血が出ていた。


「青峰くん」


「…テツ」


「僕たちは、2度も黄瀬くんに名前を奪われました。今回は、そんなことさせられません。だから、名前に僕たちのことを思い出してもらうんです」


空色の髪の黒子は真剣な顔つきで言う。
黒子の手は、刀についている黒の珠を撫でていた。


「…そうだね。それがいい」


黒子の意見に赤司も賛成する。


「奪われたなら取り返せばいいんだからな」


この瞬間から、物語が動き出す。


ーーーーーー


「……名前?学校はどうだったかしら」


夕御飯の時、お母様に話しかけられた。


「は、はい!初めての学校楽しかったです」


「名前楽しんでたっスよ!」


「そう、良かったわ」


にこりと優しそうに微笑む。
隣のお父様も微笑んでいた。


「辰也、明日はお前に木吉家に行ってもらう」


「…はい、おばあ様」


おばあ様は、厳しい人で辰也くんを気に入っている。
私に対しても涼太に対しても厳しい。


この時はまだ、私は何も知らないでいた。