櫻籠り哀歌

汚れた世界からこんにちは

ガラガラ


玄関のドアが開く音がした。


「あ、涼太だ!」


私は部屋を出て玄関へと向かう。
そこには、真と涼太がいた。


「おかえり、涼太」


「ただいまっス、真っち」


くしゃりと前髪を掻き分ける涼太。
…なんか、行きづらい。


「…名前を先に帰らすとか珍しいな。どうしたんだ?」


「…ちょっと厄介な奴らに会っちゃったんスよね」


「ふーん。あの、5人か」


「あれ、良く分かったっスね」


「ふん」


…なんの話をしてるんだろう。
涼太は、難しい顔してるし。


「想像できる」


「…そうっスか」


そのとき、涼太と目が合った。


「名前っ!無事に帰れたんスね」


涼太は走りこんできて、ぎゅうっと抱きつく。
視界の片隅で真がため息をついているのが見えた。


「当たり前だよ!」


「名前、母さんとかは?」


いつもだったら、出てくるはずなのに…と言う涼太。


「お母様とお父様は木吉家に行ってるんだって。おばあ様とおじい様は、裏の屋敷だって」


「…どうしたんスかね」


「あー奥様と旦那様は、木吉家の刀が紛失したってことで見に行ってるぞ」


真が会話に入ってきた。
刀が紛失…?


「え、あの家宝とも言える『園川血盟』が!?」


「…それまた、大変なことに」


「奥様は探知系の能力だからな、それでだろう」


「そうなんだ」


お母様は、無機物から声を聞く能力なのだ。
だからかと納得した自分がいた。