理想的なカップルの裏事情 ■しおりを挿む
◆ ◆ ◆
「はぁー…」
人気者って、隙間がないんだな。
隙じゃなくて隙間。
取り巻きが密集していて、近付く隙間を与えてくれないんだ。
土日を抜いてかれこれ三日は経つけど、初日は大きなチャンスだったんだなーとしみじみ思う。
というわけで、今日も俺はご本人たちを見ることもできずに、諦めて帰るべく廊下を歩いていた。
今まで、こんなにでかい仕事をしたことがなかったからなぁ。
ずっと『中等部での一コマ』っていう、花壇の植物や樹木が相手の写真記事を担当していた。
せめて運動部の試合や大会出場前の意気込み、みたいな記事だったらなぁ。
タイミングさえ間違わなければ普通に答えてくれそうだからさ、そういうのって。
でもこれはゴシップだから、申し込んだとしてもそうそう簡単に答えてもらえるわけがないよな。
しかも、ゴシップな企画は周防学院報道部の発足以来、初!の試みらしい。
前例がないから先輩たちにも秘訣を訊けないし…。
俺が唯一取材対象と同学年の部員だからって任されたんだけれど、よく考えればそんな決め方は安直すぎる。
「あ、キミだ」
部長に、俺ではダメでしたって言って、担当を変えてもらおうかな。
「おい、カメラ小僧」
「なにそのセンスのないあだ名」
いや…簡単に諦めるなんてダメだ。
まだ一週間もがんばってないじゃないか。
「名前を知らないんだ。しょうがねぇだろ」
「だからってカメラ小僧はないよ。ダサすぎる。ねぇ、キミ」
まずなにか作戦を練ってみる?
あの取り巻きの中にコネを作るとか…。
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