理想的なカップルの裏事情

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 飲んだらあっちの長谷川のファンに殺されそうだ。

 受け取っただけでも、凄まじい殺気だし。


「悠貴の飲みかけなんか嫌だよな? こっちを飲んでもいいぜ」


 藤枝までもが俺にペットボトルを手渡してきた。

 しかも、これも飲みかけだ。

 で、受け取ってしまうアホな俺。

 こっちを飲んだらそっちの藤枝親衛隊に殺されそうだ。

 左右の手にあるペットボトル。

 その先にいる、俺を見つめるご本人たち。

 そしてさらにその先にいる彼らの取り巻きが、俺に殺人光線を発したような気がした。

 ダメだ!どうする、俺!?


「…あ、両手に持ってちゃ蓋が開けられないじゃんね」

「それもそうだな。ぼーっとしてて可愛いな、こいつ」


 藤枝にも可愛いとか言われてしまった。

 可愛いのは君の恋人だろう…。

 二人が、俺の手にある自分のペットボトルの蓋を開けた。


「…………………」


 開けてもらって悪いんだけれど、飲むわけにはいかない。


「ねぇ…早く飲まないと、口移しするよ?」

「!?」

「おい悠貴、勝手なことすんなよ。こいつに最初に声を掛けたのはオレだ」

「は? 葵こそなんなのさ。僕が先にこの子に飲み物をあげたんだけど」

「なんだと?」

「文句あんの?」

「─────!?」


 なにこのカップル!

 とにかく危険を感じた俺は、二人にペットボトルをそれぞれ押し付けるように返して、来た道を全速力で引き返した。

 すみません部長!俺には無理でした!

 俺は心の中で、何度も部長に詫びた。

 とは言っても、また突撃するつもりだ。

 絶対にインタビューに成功して、立派な記事を仕上げてやる!




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