理想的なカップルの裏事情 ■しおりを挿む
──あぁ…緊張で、口の中が渇いてきた。
俺の名前は高橋裕斗。
私立周防学院高等部一年生、報道部所属。
周防学院は全寮制の中高一貫校で、高等部はほぼ全員が中等部からの持ち上がり。
というわけで、中等部の頃から報道一筋の俺の報道部歴は四年目だ。
一応中堅とも言える報道部員だけれど、初めての大仕事だから緊張する。
部長に託されたから、となにも考えずに突っ走ってきたけれど。
教室のプレートには1-3…間違いなし。
胸元に提げたデジカメを確かめるように撫でて…ドアに手を掛けた。
「し、失礼します」
途端に止む会話。
当たり前ですよね…すみません。
「なんだお前。なんか用か」
グループの中から長い脚で俺に近付いてきたのは、お目当ての人物である藤枝葵。
別に髪の色とか格好が派手なわけでもないけど目立つ、華のあるイケメン。
生徒会役員なんかにできるような親衛隊が、結成されているとかいないとかいう噂。
そのオーラの眩しさに、俺は恐怖心さえ抱いてしまう…。
「こら!いじめちゃダメだよ」
藤枝の背後から声を上げたのがもう一人のお目当て、長谷川悠貴。
明るくて人懐っこい、これまた目立つ美少女アイドル顔負けの美少年。
こちらにも、ファンクラブがあるらしい。
ちなみに男子校なんで、親衛隊もファンクラブも、メンバーはみんな男だ。
この二人は持ち上がり組ではなく、毎年一人いるかいないかっていう外部から入学してきた真の新入生。
そのせいでただでさえ目立つのに容姿が極上ってことで、中等部三年間の男子校生活でそっち方面に毒された高等部の奴らは、学年問わず大騒ぎ!
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